
His←♥→I
第1章 SO~小人×一般人~進撃の小人編~
智「熱くない?」
翔「うん。丁度いいよ」
最後の晩餐の後は風呂だ。
もうすぐやって来る空虚に耐える為にも俺は、最後の風呂を翔と一緒に入った。
智「ここ、乗って」
翔「うん。ありがと」
翔を掌に乗せ、一緒に湯船に浸かる。
翔「腕、疲れない?」
智「軽いから大丈夫だよ」
大丈夫だと言うのに心配する翔は、俺に斜めになれと言う。
智「こう?」
翔「うん。じゃ、ちょっと失礼するね」
斜めに座った俺の胸に、翔は張り付いた。
翔「ほら、これなら溺れないでしょ」
智「ふふ、ほんとだ」
俺の胸に転がって肘をつき俺を見る。
両肘をつき、手を顎に当てて俺と話している翔は、まるでアルプスの少女ハイジのようだ。
翔「智くんは、俺が戻るの嫌なの?」
ドキッとした。
嫌と言う訳ではない。只少し、残念なだけだ。
智「そんな訳ないよ。当たり前でしょ(笑)」
俺の胸に乗る翔に、この心臓の音はバレただろうか。
翔「俺を、手離したくない...?」
智「え?(笑)」
俺の我が儘な気持ちは、翔に伝わってしまってるのだろうか。
智「翔くんといるのは楽しいけど、そんな事は思ってないよ。早く元に戻って欲しいと思ってるよ...」
翔「そう...」
その真顔は何を思ってるのか。
困ったようにも見えるし、少し残念そうにも見える。
智「...また、のぼせちゃうよ。 早く洗お?」
翔「うん...」
翔の表情が掴めなくて、話しを逸らした。
ひょいっと翔を摘んでバスタブの淵に立たせる。
智「はい、バンザイして」
翔「えっ」
智「最後なんだから。洗ってあげるよ」
翔「や、さ、最後ってなに」
有無を言わさず翔に手を伸ばす。
翔「ちょ、く、くすぐった」
智「ふふ、じっとしてて」
泡を翔に撫で付けてやると、体を捩って逃げようとするんだ。
翔「うひゃ、ひゃひゃっ」
智「大人しくしないと落ちちゃうよ」
子どもの頃、おもちゃを持って風呂に入ったけど、そのおもちゃは話も出来なければ感情も無かった。
こんなに楽しい風呂は、久し振りだ。
