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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
翔「また薬作ろう」
智「もう材料無いじゃん」
翔「あ」
そうだ。
贅沢にも全部使ってしまったんだった。
翔「すぐに注文しよう。早く届けてくれたし」
智「...無理だよ」
翔「どうして」
智「最後の1個だったんだ」
あの薬はいろんな材料を使ったらしい。
そのうちの一種類が貴重で、なかなか手に入らないと言う。
智「...てか、俺あんなの飲みたくない」
あんなのって。
俺飲んだんですけど。
翔「...因みに、どんな材料を...?」
智「すっぽんの生き血と胆汁、マカエキスでしょ...、それに」
目を天井に向け、思い出しながら智くんは話す。
するとふと視線を落として、口調が重くなった。
智「...鷹の爪と、雀の涙と...」
翔「鷹の爪? それくらいならコンビニでも」
智「いや、違う」
翔「...なにが」
智「唐辛子じゃなくて、本物」
本物、とは?
智「生きた鷹を捕まえて、生爪を剥がしたやつ」
翔「え」
智「雀の涙はそのまんま、雀の、涙」
翔「は...」
智「後は、ねずみのしっぽ。だけ、かな」
だけっておい。
それ相当なんだけど。
翔「俺が飲んだのって、それ入ってたの...?」
智「ん? うん」
あらまあアッサリと白状したな。
智「だから俺は飲まない」
翔「や、でも。戻れなくなっちゃうよ?」
智「どうせなかなか材料手に入んないよ。他の方法考えて」
マジか。
智「...失恋のショックで会社休んでるとか思われたら、俺もう生きていけない」
そりゃ大変だ。
智くんには生きて貰わなきゃ俺が困る。
智「だから早く探して」
泣きそうな顔で俺を見てるんだろうと智くんを見たら。
智「こんな事になったのも、全部翔のせいだからな」
俺をガッツリ睨んでた。
ついには呼び捨てで俺を呼んだ。
翔「う、うん」
ちんまりとして可愛くて、なのに物凄い勢いで俺を睨み付ける。
智「あ、でも」
ポンっと手を叩いて上を見上げた。
智「明日から仕事だよね? じゃあ今日はいいよ。もう寝て」
心まで小さくなった様に思えたけど、やっぱり智くんは優しいんだ。
こんな状況でも、俺を気遣ってくれるんだから。
そんな智くんだから、俺は恋をしたんだ。