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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
翔「ん...、あれ。智くん...?」
智くんがいない。
俺のベッドに寝かせてたのに。
まさか潰しちゃったんじゃ。
智「なに」
布団をバサバサ捲って探していたら、後ろから冷やかな声がした。
翔「あ...、良かった。そこに居たんだ」
生きてた。
翔「おはよ...って、なにそれ」
智「ん?」
何そのオシャレな服。
智「ああ...、彼氏に貰った」
翔「はっ?」
彼氏、だと?
智「ほら」
智くんの小さな指の指す方を見た。
するとそこに、リカちゃんの彼氏が身ぐるみを剥がされて転がってた。
翔「あ、ああ、彼氏、ね」
智「...何だと思ったの」
声が冷たい。
昨晩の甘い吐息とは大違いだ。
翔「なんか、怒ってる...?」
智「べつに」
ツンツンしている智くんは、明らかに怒っている。
智「もうこんな時間だよ。遅刻するんじゃない?」
翔「えっ」
申し訳ないが、智くんは後回しだ。
取り敢えず顔を洗って歯を磨いて、服を着ると智くんをポッケに押し込んだ。
智「んぷっ」
翔「あっ、ご、ごめんっ」
智「ちょ、なんで俺まで」
翔「だって1人じゃ何も出来ないでしょうっ」
智「え、ちょ、しょ、翔っ」
ポケットの中で暴れる智くんを押し込むと、俺は玄関を飛び出した。
智くんが落っこちない様にとポケットを押さえ、軽やかに走り出す。
智「どっ、どこ行くのっ」
翔「だから、会社に」
智「じゃなくてっ、車?」
翔「電車っ」
智「だったら逆だよ、逆っ」
翔「え」
まだ土地勘が掴めてなかった。
教えてくれた智くんに感謝して、俺はくるっと方向転換する。
智「うわわっ」
翔「ごめんっ、大丈夫っ?」
智「だ、大丈夫じゃねえ...っ」
やべえ。
すれ違う人が俺を見てる。
そりゃそうだ。
遅刻しそうで爆走してるだけでも振り返られるのに、今の俺はニヤニヤとにやけながらぺちゃくちゃと話してるんだから。
折角引っ越したのに、俺は気持ちの悪いお兄さんのイメージが付いてしまいそうだ。
