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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
ブレイクエリアまで足を伸ばす。
すると、きゃっきゃと女子社員達の声が聞こえてきた。
「ふふっ、可愛い~」
「本当リアルよね~。この肌触りも本物みたい」
ドリンク片手に女子社員達は話に花を咲かせている。
いい気なもんだ。
俺はそれどころじゃないってのに。
「髪もふわふわっ」
「ねえ、これだけリアルだったらひょっとしてアレも付いてるんじゃない?」
「ええ~」
...ん?
「ちょっと、脱がせてみる...?」
「やだ~♪」
ちょっと待て。なんだか嫌な予感がする。
「わ...。本当リアル...」
「この薄く付いた筋肉、触り心地が...」
「まるで本物みたいじゃない?」
まさか。
「胸でこうなんだから、きっと下も...」
「やっ、ヤダ。先輩えっち~」
嫌な予感を抱えながら、その女子達が囲んでいるカフェテーブルを見た。
「い、いくわよ...?」
その丸いカフェテーブルの中央には、横たわった智くん。
「う、うん」
ゴクリと生唾を飲む女子社員の手が、智くんのベルトにかかる。
翔「さっ、智くん!」
ズサーッと滑り込むようにカフェテーブルに激突する。
激突した俺は、上半身を乱れさせ色気を漂わせる智くんを両手に収めた。
「さとしくん?」
俺の背後にきょとんとする女子社員達。
「え、まさかその人形って櫻井さんの...?」
白い目をジロジロと向けられている予感がする。
翔「いやっ、あの」
勇気を出して振り向いてみれば、肩を寄せ合い怯える女子社員。
翔「ま、まさか。俺のじゃ無いよ」
「そ、そうですよね。櫻井さんがそんな」
翔「そうだよ。変態じゃないんだから(笑)」
なんとか誤魔化せそうか。
「でも、さとしくんって…」
翔「あ、ああ。姪っ子が欲しがっててね。姪っ子の為に買ったところなんだ」
「あ~そうだったんですか。やっぱり櫻井さんて優しいんですね」
「何ていう人形なんですか? 見た事無いけど...」
翔「え~っと、リカちゃんの彼氏? だったかな。新しいのが出たみたいで」
話しながら俺は少し冷や汗をかいていた。
何故なら俺の手の中で、智くんがおもいきり俺の掌をつねっていたから。