His←♥→I
第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
智「“俺の”じゃないんだ」
昼休みに智くんと近くの公園に来た。
智「俺がいたら、翔くんは変態なんだ」
翔「や、あれは」
人気の無い場所を選んで弁当を広げる。
でも、智くんはご飯を食べずにちょこんと座って俺を見上げていた。
智「俺は姪っ子の為に買われたのか...」
翔「言葉のあやだって」
智「は?」
可愛く見上げていると言うよりは、グチグチと文句を言っているのだけれど。
翔「て言うか、智くんこそあんな所で何してたの。必死で探したんだから」
智「落っことしたくせによく言うよ」
やっぱ俺が落としたのか。
智「ペコペコ頭下げすぎなんだよ。落ちるの当たり前だ」
翔「ご、ごめんなさい」
智「ほらまた」
あの薬、やっぱり性格まで変えてしまうのかな。
もっと心の広い、おおらかな人だと思ってたんだけど。
智「翔くんが頭下げる事なんて無いじゃん。あんなオッサン蹴っ飛ばしてやりゃ良かったのに」
あ、でも。
やっぱりなんだかんだで優しいかもしれない。
翔「上下関係ってのが色々あってね。みんな頭が固いから」
智「翔くんが出来ないなら俺がやってあげるよ」
睨んでいた目を、くるっと丸く変えて。
智「もうあのオッサンの顔、覚えたし」
翔「本気なの?(笑)」
智「ふふっ」
悪戯っぽく笑う顔は初めて見たけど。
でも、やっぱりあの柔らかい笑顔と被って見える。
智「あ~、腹減った」
翔「ん、食べよう」
小さくて、ご飯を食べるのも一苦労だけど。
ベンチに座る俺の膝の上で、足を伸ばしてリラックスしてる。
そんな姿だけでもなんだか感動して。
ああ、俺に安心してくれてるんだな。
警戒せず、身を任せてくれてるんだなと、嬉しく思う。
智「なあに?」
そんな俺の視線を感じたのか、ふと俺を見上げて聞くんだ。
翔「いや」
あんまり可愛くて目が離せなかったんだとか言ったらまた、呆れられるだろうから。
今は黙って、その愛しい後頭部を見ておく事にするよ。