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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
翔「あっ」
バサバサとカラスらしきものが前を横切った。
俺の唐揚げを狙うなんて、図々しい鳥だ。
智くんもさぞ驚いただろうと目線を落として話し掛ける。
翔「危なかったね。唐揚げは守ったよ」
あれ。智くんは?
智「しょおく~ん」
ん?
智「助けてえ~」
何処か遠くから智くんの声が聞こえた。
その方角に目をやると、智くんはカラスに鷲掴みにされて空を飛んでいるんだ。
カラスなのに鷲掴み。
鷲じゃないのに...。ぐふふ。
って今はそんな場合じゃない。
翔「こっ、こら待てっ」
ほんの少し躊躇ったけど、持っていた唐揚げを投げた。
カラスに向かっておもいきり、投げ付けてやった。
智「わぁ~」
翔「ああっ」
唐揚げを掴むべく、カラスは智くんを離した。
すると、ひゅ~んと智くんが落ちて行くんだ。
翔「智くんっ」
頼む。落ちるなら地面じゃなくて俺に落ちてくれ。
落ちるんじゃなくて、俺に、恋に堕ちてくれ。
ふとそんな事が頭をよぎったが、なんとか滑り込んで智くんをキャッチした。
智「ふぅ...」
翔「ぶっ、無事?」
腰を抜かしているであろう智くんを大事に包み、顔を覗く。
すると、智くんは腰を抜かすどころか礼も言わず俺を睨み付けた。
智「...唐揚げ好きなの?」
翔「や、普通だけど」
智「俺じゃなくて、唐揚げを守ったよね...?」
翔「えっ」
咄嗟なんだ。これは仕方ないんだ。
智「唐揚げも、投げるのちょっと躊躇ったでしょ?」
翔「いや、あれはっ」
鳥なのに、鳥食うのかなって。
決して勿体ないとかそんなんじゃ。
翔「ご、ごめん、ね...?」
言い訳が言い訳にしか聞こえず、俺は反論するのを諦めた。
それで少し、罰が悪そうに頭を下げると。
智「ほらまた...。からかっただけなんだから謝らなくていいんだよ」
翔「え?」
智「ふふ、助けてくれてありがとうね? 翔くん♪」
ニコニコと笑う姿はとても素敵で。
小さい俺が見上げた智くんは大人びて見えたけど。
智「なんだよ。ニヤニヤすんなって...」
小さい智くんだって負けてない。
その可愛さは子供とはまた違うし、その柔らかい雰囲気は大人ともまた違う。
なんて言えばいいのか分からないけどとにかく、魅力的なんだよ。