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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~



男はひょいっと智くんを摘み上げた。

摘まれて、ぷらーんとしている智くんをじっと見つめている。


翔「あ、あの」


俺の声が届いていないのか、俺には見向きもせず首を捻りながら智くんを見る。

掌に乗せ、ツンツンと智くんをつつき、更には顔を寄せてクンクンと匂いを嗅いでいる。


翔「あっ、あの!」

潤「ん...?」

翔「そ、それ」


それ、と指を差すその先の智くんをチラッと見て、声には出さずに コレ?と首を傾げて聞いてくる。


翔「俺のなんですけど...」

潤「俺の?」

翔「返して貰えます…?」


なんだか威圧感のあるその男にびびってしまって、声が少し裏返った。


潤「これ、なに?」

翔「に、人形ですけど」

潤「人形?」


どうしてそんなに見るんだ。
物凄く疑い深い目で、真っ直ぐに涼しそうな顔をして俺を見てくる。


潤「...アンタ、そこの研究員だよね?」


そこ、と言いながら後ろに見える俺の勤め先を指差した。


潤「前に雑誌で見た事あるよ? 小人の研究してるって…」

翔「ひっ、人違いじゃないですかっ?」


やべえ。この流れはマズいぞ。


潤「俺さ、ある人と連絡取れなくなっちゃって心配してんだよね」

翔「へっ?」

潤「家に行っても居ないみたいだし、さ」

翔「あ、はい」


それが何か?


潤「...そっくりなんだよね」

翔「え」


その男は、掌に乗せた智くんをじっと見つめた。


潤「そっくりなんだよ。その人と。...コレ、本当に人形なの?」


疑り深い瞳はそういう事だったのか。

知り合いと忽然と連絡が取れなくなったと思ったら、こんな所にその知り合いにそっくりの人形がいた。

しかも“俺のだ”というヤツは小人の研究をしていると言う。


と、言う事は。


これは人形じゃなくて、居なくなった知り合いが小人にされたんじゃないかと疑ってるんだ。


あながち間違いでは無い。


潤「この人形、智の匂いがするんだけどなぁ...」


クンクンと鼻を鳴らすその男は、智くんを食べてしまうんじゃないかと言う程に顔を寄せている。


だけど智くんを見世物にする訳にはいかないんだ。


なんとしてでも、俺が食い止めなければ。






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