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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
智「...そんな趣味あったの?」
翔「ばか。無いよっ」
俺の手に包まれている智くんまで少し引いている。
翔「つかさ、言ったでしょ。危ないから離れないでって」
智「だってダンゴムシが」
翔「だってじゃないでしょっ」
また唇を尖らせてる。
不貞腐れると、いつも少し唇を尖らせて俺を見上げるんだ。
翔「てか、あれ誰」
智「へ?」
翔「“智”なんて呼び捨てにしちゃって...。心配してるらしいよ“潤”が」
あれ。言い返して来ない。
黙ったまま、智くんは俺をじっと見てる。
智「翔くんだって」
翔「ん?」
智「“雅紀”って呼んでたじゃん」
あ。でもあれは会社の只の同僚だし。
智「一緒だよ。翔くんだって、トモダチに呼び捨てで呼ばれたりするでしょ?」
翔「あぁ...」
なんだろ、俺。情けないな。
最近ずっと一緒にいるから、智くんが俺の物になったと勘違いしてたのかもしれない。
智くんは俺の物になんてなってないのに。
勝手にその身体を抱いたけど、智くんの心は、俺になんて無いのに。
智「...只のトモダチだよ」
俺が黙ってしまったからか、智くんは俺を伺う様に静かに口を開いた。
智「潤は会社の後輩で、仲の良い友人なんだ」
恋人でも無いのに、俺がヤキモチを焼く権利なんて何処にも無かった。
だけど智くんは、そんな俺に呆れる事もせずに話してくれる。
翔「うん...。なんか、ごめんね? 変な空気にしちゃって...」
智「いいよそんなの。気にしないで...」
俺の掌に乗る智くんは、ずっと俺を見てるんだ。
目を逸らさずに俺を見続けるその胸中は分からないけど、今すぐに抱き締めたくなるような、そんなせつない顔をしている様に見えた。
翔「じゃ、戻ろっか...」
そんな顔を見て、何か可笑しな事でも言って智くんを笑わせたかったけど。
気の利いた言葉も出せずに俺は公園の時計を見ただけだ。
智「...ダンゴムシ、連れて帰っていい?」
翔「だっ、駄目!」
智「え~」
なんだよケチと、笑う智くんに救われた。
だから俺もその笑顔に誘われて笑うんだ。
智「触れないんだ?」
翔「さっ、触れるし」
んふふと、俺の胸ポケットに納まり智くんは笑い続ける。
だから俺も、笑顔で歩く事が出来たんだ。