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第1章 SO~小人×一般人~進撃の小人編~
智「じゃあ、明日散歩しよう」
翔「散歩?」
帰る家がわからないのにどうすんだと、俺は少し呆れた息を吐いてしまった。
たとえ漏らしたとしても気付かれない様にと、普段から小さい息を吐いていたのに、小さな翔にははっきりと伝わってしまったみたいだ。
それで背をまるめてがっくりと項垂れている。
智「ん。ウロウロしてたら、見た事のある景色に辿り着くんじゃない?」
翔「え、いいの...?」
智「ふふっ、どうせ俺も休みだしね」
まるめていた背を伸ばして、俺を見上げた。
その途方に暮れた顔に希望の色が見えてきた様で、俺は少し安心したんだ。
翔「ねえ。智...くんも、社会人なの?」
智「...ふふっ」
取り敢えず寝ようと言う事になって、翔の布団代わりのタオルをベッドの真横のサイドテーブルに敷いてやった。
だけどこんな高い所怖いと言うから。
翔「え、どうして笑うの」
智「や、そんなイントネーションで呼ばれた事無いなと思って(笑)」
床に寝るにも広過ぎて怖い、ベッドの下から何かが出てきそうだと人の家をお化け屋敷呼ばわりした。
だから今、翔は俺のベッドで俺の隣りに寝ている。
智「んふ、いいね。その呼び方」
翔「そ、そう?」
智「ん、気に入っちゃったな...」
天井を見ながら話をしていたけれど、ふと顔を傾けて翔を見た。
すると翔もこっちを見ていて、少し口をぽかんと開いていた。
智「ん? どうしたの」
翔「や、なんでも...」
なんでも、と言うと俺から目線を逸らし天井を見上げる。
その少し挙動不審な行動に、俺は首を傾げ翔を覗き込んだ。
智「だったらなんで目、逸らすの」
覗き込むと翔は目をぱちくりし、布団に隠れようとする。
智「あっこら」
翔「や、ほんと!何でも無いってば!」
隠れようとする翔を片手で押さえると、翔はぐふっと言った。
翔「その...、雰囲気が柔らかくて」
智「ん?」
翔「和んでただけだよ...」
小さくなってしまって心細かったんだ。
だけど貴方が優しい顔をするから、安心して惚けてただけだと翔は言うんだ。
智「なんだ、そっか」
翔「うん」
俺の横でモゾモゾしながら恥ずかしそうに言う。
だから俺も、少し恥ずかしくてドキドキしてしまったんだ。