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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
コポコポ...
試験管に入った薬品は、プクプクと泡を立てながら揺らめいている。
智「ん...、しょお、くん...?」
翔「あ、起きた? おはよう」
相変わらずリカちゃんハウスから出てくるんだ。
翔「気に入ったの? それ」
智「別にそう言う訳じゃ無いけど」
目を擦りながら、ぽてぽてと俺に歩み寄ってくる。
そんな愛くるしい姿も、今日でお別れなんだ。
智「こんな早くから何してるの? 仕事は?」
翔「今日は土曜日だよ。仕事は休み」
智「あ、そっか」
昨日注文した品がもう届いた。
なんだあのサイト。くそ早い。
智「...あ? まさか」
翔「そのまさかだよ」
智「うぇ...」
余程この薬が嫌なんだろう。
智くんは凄く嫌そうな顔をしたけど、それはこの薬に対してだ。
俺と離れるのが嫌で、そんな顔をした訳では無いんだ。
智「...いつ、出来るの?」
翔「ん~、昼は過ぎるかな」
智「そっか...」
少し残念そうなその顔も、俺の為に出た表情では無い。
翔「ほら、そろそろ覚悟決めなさい」
智「ん...」
寂しそうな顔。
その表情を、俺によって出させたい。
翔「出来るまで、飯でも食おうか」
智「うん」
明らかに口数が減って、少し落ちこんでいるようにも見える。
翔「コンビニ、一緒に行く?」
智「うん」
俺の前に立ち竦んだまま、コクンと頷く。
寝癖のついたボサボサの髪を、少し揺らして頷くだけなんだ。
翔「乗って」
また静かに頷くと、大人しく俺の掌に乗る。
それを俺は、大事に胸ポケットにしまった。
翔「小さな智くんと、最後の散歩だね」
智「そうだね...」
呟く様に放ったその声も、俺が出させている訳じゃ無い。
あの薬嫌だな、あんなの飲みたくないな、そう思いながら放った言葉なんだろう。
智「嫌だな…」
ほら、ね。
俺の思った通りだ。