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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~



翔「あ、ここ」


ポケットの中で大人しく揺られている。
いつもならそんな時は大抵寝ているのに、今日は黙りこくって静かに揺られていた。


翔「智くんに踏まれた所だ」

智「え...?」


一言も話さず静かにしている。
上から覗くその姿が少し肩を落としている様に見えて、俺は会話を仕掛けた。


翔「潰されちゃうんじゃないかと思ったよ(笑)」

智「ふふ...、ごめん」


静かに笑うその顔も、なんだか寂しそうに見えて。


智「ぼーっとしてたからね」


小さくなってからは、怒ったりはしゃいだり、だからうっかり忘れてたけど。


翔「やっぱりまだ、寂しいよね…」

智「え?」


結婚をキャンセルされたんだ。
会社にだって知ってる人は沢山いるだろうし。
元に戻ったら、現実の世界に立ち向かわなければならない。


翔「でも、大丈夫だよ」


だから、戻った後の事を考えて憂鬱になっているのかもしれない。


翔「言ったでしょ。貴方は素敵な人だから、きっといい人が見つかるって」

智「へ...」


肩を落としているから、励ましてやろうと思ったんだ。


智「え、なんの話」


笑って欲しくて、慰めてやろうと。

なのに智くんは、笑うんじゃなくて、きょとんとしながら俺の胸ポケットに捕まっている。


翔「なんのって…、だから、結婚の」

智「あ...?」


ポケットに両手を掛け、顔を覗かせ小首を傾げる。


智「あ、ああ...。ふふ、忘れてた」

翔「へ」


今思い出したとでも言う様に、眉を下げながら笑う。


智「駄目だな、俺」


情けない顔をしながら、目線を落として笑うんだ。


智「そんな事も忘れてるなんて、逃げられるのも当たり前か」


情けないなぁなんて、自分に呟いてポケットに引っ込んだ。


智「なんだろな...。なんか、翔くんに出会ってから」


ポケットに引っ込んだ智くんは、遠くを見ていて。

その瞳に映る青い空に、思わず惹き込まれそうになった。


翔「忙しかったからね」


俺の世話をしたり、自分が小さくなったりで大変だったんだ。
それくらい、忘れても当たり前だ。


翔「駄目なんかじゃないよ」

智「え?」

翔「情けないなんて、言わないで」


その青い空に何を映しているんだろう。


遠くを見る、貴方の頭の中が知りたい。






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