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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~
智「...」
コンビニで買った飯を2人で分けて食べた。
食べ終えた智くんは、無言で自分の座るテーブルを見ていた。
翔「そろそろ、薬も出来そうだね」
智「うん...」
朝、俺が薬を作っているのを知った時から様子がおかしい。
翔「ほら...、もう覚悟決めなきゃ」
智「ん」
それ程までにこの薬が嫌なのか。
俺は飲んだのに。
智「風呂、入る」
翔「へ。お風呂?」
智「最後に泳ぐ」
翔「ははっ、分かった」
どうやら薬を飲む覚悟を決めたようだ。
その事に少しホッとしたような、残念なような。
そんな想いを抱えながら俺は風呂の準備をした。
翔「できたよ。どうぞ」
智「...翔くんもだよ」
翔「え、俺? いいの?」
智「溺れたらどうすんだよ」
この間、精液を採取しようとした日から、智くんは俺と一緒に風呂に入らなかった。
そんな変態と入ったら何されるかわかんないと、いつもカップをリカちゃんハウスに仕込んで入ってたんだ。
そんな智くんが、俺を誘う。
スイスイと軽やかに泳いで、溺れる訳なんてないのに、俺を誘ったんだ。
ぽちゃ...
智くんを浴槽に浮かべてやると、そのままスイ~っと泳ぎ出す。
智「もっと泳いでおけば良かった」
独り言を呟きながら、気持ち良さそうにプカプカと浮かんでる。
智「ちょっと、休憩」
翔「ふふ、お疲れ」
ニコッと笑って智くんを見る。
智くんは、そんな俺と目が合うんだ。
智「うん...」
一瞬俺を見つめ返して、すぐにその目を逸らす。
目を逸らしたまま俺の腕に掴まった智くんを、俺の胸に乗せてやった。
翔「どうしたの? 楽しくなかった?」
智「や、楽しかったよ」
翔「そう?」
楽しかったよと言う割りに、笑顔もあまり出ていない。
ゆらゆらと揺れる水面を眺めて、どちらかと言えばぼーっとしている。
智「こんなに早く戻れるなら」
ぼーっとしていた智くんは、独り言の様に言葉を発した。
智「もっと風呂に入っときゃ良かったな」
そこか。
もっと小人を満喫しておけば良かったと、そう思っていたのか。
智「惜しいな…」
俺が小さな時も聞いたその台詞。
小人になった智くんは、何を思ってそんな台詞を吐くのか。
俺は、そこが知りたいんだ。