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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~



智「じゃあ...」


まだ夕陽も出ていない。
そんな時刻に、別れの時がやってきた。


智「なんか忙しかったけど、楽しかったよ」

翔「うん...」


この人に翻弄されたまま絶頂を迎えた。
ぼーっとする意識の中で、俺は智くんをぎゅっと抱き締め、目を閉じた。


智「戻してくれてありがとね?」

翔「うん」


この人に纏う不思議な心地良さに誘われて、眠ってしまったんだ。

そして次に目を開けたら。


智「ふふ、この洗剤いい匂いがする」

翔「でしょ」


俺が洗っておいた智くんの服をしっかり着て、眠る俺の隣に座ってた。

月曜から仕事だから。
長く休んでたから、準備が色々とあるんだとか言って。

家に帰る気満々で座ってたんだ。


智「...翔くんに会えて良かったよ」


玄関に佇む智くんは、少し眉を下げて俺を見る。


智「彼女の事も、うそだろってくらい、なんとも無いや(笑)」

翔「ははっ、そうなんだ?」

智「うん。...やっぱ、翔くんがいたから、かな」


俺と会えて良かったと、俺がいてくれて良かったと、そんな事を言う智くんは出て行こうとしてる。


翔「また、会える...?」

智「え?」


じゃあねと言われる前に、俺は口を開いた。


智「ふふ...、だから、その顔されると弱いんだってば」


ドアノブから手を離し、その手を俺の背に回す。
そのままふわりと俺の胸に飛び込むと、ぎゅっと俺を包んだ。


智「ありがとう、翔くん...」


何の礼だか分からない。
けど、智くんは柔らかい笑みを俺に向けて、ありがとうと言うんだ。


智「じゃ...」


包んでいたその手を俺から離した。

そっと離すと、静かにドアを開け天を見上げる。


智「現実に戻るか…」


心の声だろうか。
俺が後ろに居る事も忘れて、独り言のように呟いた。


翔「智く...」


もう会えない。
そんな気がして、呼び止めようとしたんだ。


智「ばいばい」


顔を横に向け、背中越しにチラッと俺を見ると、智くんは笑顔を見せた。


あの笑顔だ。



俺を墜とした、あの笑顔。







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