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第2章 SO~研究員×小人~逆襲の小人編~



智「...なにしてんの?」


ガチャリと小さな音が聞こえた。


翔「え...」


閉ざされたドアは開き、俺は光を浴びていた。


智「お腹でも痛いの?」


玄関に蹲る俺を、この人は心配そうに覗き込む。


翔「いや、痛くないけど…」

智「ふうん?」


少し首を傾げ、靴を脱ぎ散らかしバタバタと家に上がり込んだ。


智「ねえ、スマホ見なかった? たぶん持って来てる筈なんだけど」

翔「...スマホ?」


勝手に上がり込んで、書類やら俺の服やらをぽいぽいと放り投げてる。


智「おかしいな~。アレが無いと仕事になんないんだけど」


忘れ物を取りに戻って来たんだ。


智「ねえ、翔くんも探してよ。お腹痛くないんでしょ?」

翔「あ...、うん...」


俺の前から消えたあの人が、すぐそこに居る。


智「こっちかな…」


チャンスだった。神が与えてくれた、最後のチャンスなんだ。


翔「お腹は痛くないけど」

智「え?」


俺に背を向けていた智くんは、ピタッと止まると俺を振り返る。


翔「胸が、痛い...」


必死で声を出したにも関わらず、俺の声は小さくて今にも消え入りそうだった。

そんな俺を見て、智くんはトコトコと俺の所にやって来る。


智「どうしたの? さっきまで元気だったじゃん…」


間近まで来ると、俺の肩に手を置き俺を覗く。


智「どこが痛いの? ちょっと座った方がいいよ」


俺の背に手を添えて、ソファーへ促す。
誘導されるがままに座ると、智くんも静かに俺の隣に腰を下ろした。


智「大丈夫? 病院は...、今日はやってないのか」


俺が病気だと思い込んで、温かい手で俺の背を摩ってくれるんだ。


翔「智くん...」


そのじんわりと温かい手に、胸がきゅっとして。


智「また情けない顔して...」


ぽんぽんと背を撫でながら、俺をふわっと包み込んだ。


その温もりに、心がふわりと暖かくなる。




俺は、この温もりを離したくない。







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