続・あなたの色に染められて
第1章 Sweet life
なんとか仕事を終わらせて家に着いたのは23時を少し回った頃。
差し入れをしてくれた風間くんは 帰り道だからと律儀に私を家まで送り届けてくれた。
そして 久しぶりにゆっくりと湯船に浸かり一週間の疲れを癒して
『呑んじゃおうかなぁ。』
今週もなんとか乗りきれた自分へのご褒美に 冷蔵庫からビールを取り出してその場で封を開け
『う~ん 美味しい!』
全身を解放した。
明日は月に一度の二人揃って土日の2連休。
京介さんが二日酔いでなければきっと明日は球場に足を運ぶ。
たったそれだけなのに最近働きっぱなしだった私は心がウキウキと高鳴る。
『あっ チーズがあったかなぁ。』
寄りかかっていた冷蔵庫からお土産で頂いたチーズを出して
『美味しそぅ。』
パクリと一口 つまみ食いして幸せを噛み締めると
…ガチャ。
『ただいま……あれ?起きてたの?』
ネクタイを緩めながらリビングのドアを開ける京介さん。
キッチンにビールの缶をポンと置いて
『おかえりなさい お疲れさまでした。』
彼のバッグとジャケットを預かっていつものように寝室のハンガーに掛けると
『ウフフ…どうしたんですか?』
後ろからふわりと抱きしめられた。
『疲れたからちょっと充電。』
私の頭に顎をのせて体をユラユラと揺らして甘えてくる。
これは仕事でお酒を飲んできたときだけ出会える甘えん坊の京介さん。
きっとお酒を呑みながらも仕事の話をして 先方さんのご機嫌を伺って…らしくない京介さんだったんだろうな。
『なぁ 風呂出るまで起きててくれる?』
この甘えた声も私の心を擽るから 長くて逞しい腕のなかでクルリと身を翻し 腰に廻った手を握りしめ
『いいですよ。』
包み込んであげたつもりなのに 見上げれば 甘い声とは対照的に射抜くような焦げ茶色の瞳に見つめられ 私の心は音を立てる。
吸い寄せられるように重なる彼の薄い唇はアルコールの香りのせいなのかさっき呑んだビールのせいなのか私の瞳を潤ませる。
『じゃあ 待ってて。』
ゆっくりと絡めた指を離すと優しく微笑んでバスルームに姿を消した。
ふと視線を落とすとエンゲージリングに埋め込まれた小さなダイヤがキラリと光る。
結婚してそろそろ半年。
『早く出てこないかなぁ。』
京介さんへの想いは減るどころか深くなる一方だった。