続・あなたの色に染められて
第1章 Sweet life
『ブッ…。』
『なによ。』
風間くんが買ってきてくれたのはおにぎり3つと彼のコーヒーと私のラテ。
『いや…コンビニのおにぎりをそんな旨そうな顔して食うヤツ初めて見たわ。』
鮭のおにぎりを頬張る私を見て吹き出すなんて
『ホント面白いよな。』
椅子の背を抱き抱えるように座ってコーヒー片手にケラケラと笑う。
『笑いすぎ。』
その笑い方は彼のトレードマークみたいなものだった。
『っていうか…どうして私がいるってわかったの?』
『男の勘。』
『うふふ…何それ。』
お腹も少し満たされると自然と笑みも溢れてしまう。
『いやさ 昼前に出るときホワイトボード見ながらボソッと言ってたろ。「帰ってきたらやろう。」って。』
『私そんなこと言った?』
『今度は無意識か…。京介さんも接待だから残業すんだなって…。んで、そう言えば昼飯も食ってなかったなって思って。』
『あっ。』
そうだ。考えてみればお昼は時間がなくて食べれなかったんだ。
『だから 優しいオレ様がお届けに参ったってわけ。』
椅子をクルクルと左右に回しながら得意気に笑う風間くん。
『別に良かったのに…でも ありがとう。』
入社したときから思ってたけど 風間くんはとても気が利く。
それは私だけにじゃなくてどの人にたいしても。
もうひとつ入っていたおにぎりに手を伸ばし 封を開けるとまたクスリと吹き出して
『璃子ちゃんって不器用だよね。』
『…へ?』
また ケラケラと笑いながら指差して
『さっきのおにぎりもだけど どうしてそんなに海苔が上手に剥がれないんだよ。』
『え…こんなもんじゃないの?』
確かにフィルムの間に上手く取れなかった海苔が残ってるけど
『それは残りすぎ。見ろよ ご飯が丸見えじゃん。』
言われてみればそうかもしれないけど
『いいじゃん うるさいなぁ。』
そう突き放すと風間くんはフィルムの間から海苔を器用に取り出して
『勿体ないだろ この海苔も食べてやれ。』
おにぎりにペタリと張り付け さっきまでとは違う真面目な顔つきで 私を言い聞かせるように言葉を紡いだ。
『…ごめんなさい。』
自然と頭を下げてしまった私の頭に
…え
彼の手がポンと置かれる。
『よろしい。』
見上げるといつものあの営業スマイル。
その笑顔を見たら京介さんの顔が浮かんだ。