続・あなたの色に染められて
第7章 キズナ
誘ってきたのはおまえだったよな?
『もう!京介さん!』
真っ白なうなじを見せつけといて我慢しろだって?
『こっち来いって。』
小さな背中を胸に抱くだけでガキみたいに俺の鼓動は高まるのに…
『だから!』
『ケチ。』
毎度のことだけど恥ずかしがり屋のおまえとの風呂は一苦労だった。
『ちゃんと肩まで浸かれ。』
やっと全身で寄りかかった肌は桃色の柔肌で…
『ひゃっ!』
『うん…プニプニ。』
『もう!』
そんな顔して睨まれても俺からすれば幸せなひとときだった。
***
『で?』
『…え?』
真っ白に染められたお湯のなか 京介さんは私の腕をお湯を纏うように撫でながら
『風呂に誘った理由は?』
…そうだよね。
いつも素直に首を振らない私が珍しく誘ったんだもん…そりゃ何かあるって思うよね。
『香織さんのことか?』
京介さんは私を両手で包み込みそっと耳元で語りかけた。
『それが…取り越し苦労だったの。』
そう…私の出る幕なんてまったくなかった。
『私たちが心配する必要なんて無かったんですよ。』
『どういこと?』
腕を撫でていた大きな手が私を包み込むと 私はその腕に手を添えて
『見てたらわかりました。二人は今までもきちんと向き合ってきたんだなって…。』
『そか。』
私の耳元で紡がれる相槌が心地よかった。
『香織さんてね スゴく可愛いんですよ。無理しないでちゃんと竜介さんに甘えて…竜介さんも香織さんに甘えてて…信頼しあってるんだなぁって思いました。』
『まぁ竜兄は香織さんにベッタリだからなぁ。』
『ウフフ…そうですね。』
『で…それ見てたら俺と風呂に入りたくなった?』
頬に唇を添えながらそう私に問いかける彼に私は胸の内をさらけ出した。
『…。』
『そうかそうか。』
抱きしめていた腕をさらに深く締められると彼の鼓動が背中に響いた。
その鼓動を背中で感じたら私の心は素直に言葉を紡ぎ始めた。
『もう私、京介さんの前で背伸びしません。』
『何だよそれ。』
やっと気付いたの…
大切なことは 当たり前の日常の中に隠れているだってこと
…誰のために生きてるのかじゃなくて
誰と一緒に過ごしていきたいか…
未熟な私はやっとスタートラインに立てました。
だから 思いの丈を伝えるね…。