続・あなたの色に染められて
第8章 1th Anniversary
『いたぁ!』
念願のペンギンを見つけると俺の手をグイっと引っ張って水槽まで走り出すコイツ
『かわいいねぇ。』
どの水槽を覗いても感嘆な声をあげて口を開けて目を輝かせて
『そんなに楽しいか?』
いつもは遠慮がちなのに余程楽しいんだろうな。おまえは俺の手をずっと引っ張り続けて首を縦に振る。
そうかと思えば今度は真剣な顔して時計とパンフレットを交互に眺めて
『まだ時間大丈夫?』
『どした?』
『イルカのショーがね…』
『見たいんだろ?』
『いいの?』
『水族館のメインってそれだろ?』
この満面の笑みに敵うものなんてないだろ。
『見て見て!京介さん!』
笛の合図に合わせてイルカがジャンプをする度に体を揺らしながら手を叩く姿を眺めていた俺だけど
『すげぇ跳ぶな。』
璃子と居るからなのか ガキの頃以来のイルカショーに俺こそ身を乗り出しちゃって
『次は水中トンネル行こうぜ。』
気付けば俺がパンフレットを握って璃子の腕を引っ張ってた。
『本当に水中をお散歩してるみたいだね。』
頭上をエイや海ガメが悠々と泳ぐそこは神秘的だった。
『また撮るの?』
『いいだろ別に。』
『ほらエイと一緒に…いくぞ。』
…チュッ
カシャッ
『キャッ!もうこんなとこで!』
ちょうど誰もいなくなったからってガキみたいに振る舞うオレ
水天宮でお礼参りができるようにと願いを込めて撮った一枚から始まり
大きな口を開けて親子丼を頬ぼる璃子に ビルの隙間から顔を出すスカイツリーをバックに頬を寄せる一枚まで
俺のスマホのメモリーはいろんな表情のおまえでいっぱいだよ。
『そろそろ行くか。』
…さてこれからは大人の時間
『本当は桜の季節が一番いいんだけど…』
葉の落ちた桜並木を抜けてたどり着いたのは ビルの谷間にこの季節でも深い緑の草花が迎えてくれるい名の知れたホテル
『ここに泊まるの?』
『イヤ?』
車を降り 高くそびえるホテルを見上げて立ち止まる璃子
『いいの?』
『今日は結婚記念日だろ?』
まだ部屋にも入ってないのに ったくおまえは…
『なんだよ…俺が泣かしたみたいに見えるだろ?』
『だって…京介さんが泣かせたもん。』
繋いだ手は絡み合い璃子は俺の腕を抱きしめて
『京介さんありがと。』
ホント可愛い自慢の嫁さんだ。