続・あなたの色に染められて
第8章 1th Anniversary
『さぁ奧さまどうぞ。』
開かれた扉の先、一歩部屋に踏み入れると柔らかな香りが私の鼻孔を擽った。
『突っ立ってないで。』
京介さんは私の背中を押し部屋の中央へエスコートしてくれる。
『こんなステキなお部屋はじめて…。』
たっちゃんとお仕事をしてるときだってこんなステキなお部屋を用意されたことはなかった。
ダークブラウンを貴重とした部屋に背の高い京介さんが横になったって余るぐらいのキングサイズのベッド。
そのベッドにはテーブルに飾られたバラとお揃いの花びらで彩られ
『璃子…東京タワーが点灯したよ。』
大きな窓からは東京の夜景が一望できて 伸ばされた腕に手を添えて彼の胸に頬を埋めた。
『毎月コツコツと小遣い貯めたかいがあったな。』
元信用金庫の営業マンだった彼。そんなにたくさんお小遣いを渡している訳じゃないのに 私のためにここまで演出してくれたなんて思うと胸が熱くなる
『本店に勤めてたとき、このホテルの前を通っててさ、いつかこんなホテルに璃子を連れて来てやりたいなって…良かったよ気に入ってもらって。』
東京タワーが望めるガラス窓には優しく微笑む彼が映っていて
『…京介。』
ガラス越しに視線が重なると 東京中の人たちに私のダンナさまは“世界一よ”って見せつけるように唇を重ねた。
確かめるように…感じるように…重なる唇と絡まる舌は徐々に熱を帯びて酔いしれていく
『…んぅ。』
けれども
…え
ふと離れた彼の唇。戸惑う私は彼を求めすぎた?
『悪い…これ以上したら止められなくなる。』
私の髪を撫でながら優しく微笑む彼はどこか新鮮で
『鉄板焼の予約なんか取らないでルームサービスにしとけばよかった。』
彼からもらった何にも書かれていない招待状にはまだまだ予定が詰まっているご様子で
『ねぇ、京介さん。』
…チュッ
口を尖らせ拗ねた顔した彼の頬に目一杯背伸びして答えるようにキスを落とすと
不意打ちだった?
目を丸くして頬を赤らめて
『…っおまえなぁ。』
『うわッ!ちょっと!』
不意に腰を掴まれ彼の視線よりも高いところまで抱き上げられる。
『覚悟しとけよ。飯食ったらたっぷり可愛がってやるからな。』
『ハイハイ。』
なんてね。
額を重ねて微笑み合う私たち
『東京中に見られちゃうね。』
『いいじゃん、見せつけようぜ。』