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続・あなたの色に染められて

第8章 1th Anniversary


ワイングラスを重ね、美味しいお肉に頬を緩ませた私たちはほろ酔い気分で客室に戻った。

『ルームサービスでワイン頼むけどまだ飲める?』

『一杯ぐらいなら。』

『じゃ、ハーフにしとくか。』

最上階のラウンジで夜景を眺めながらグラスを重ねるのもよかったけど 今日は誰の目を気にすることなく彼に寄り添いたかった。

『甘ったれだな。』

『ウフフ…ダメ?』

『別にいいけど。』

彼がソファーに座ると逞しい腕に寄りかかり グラスを片手に宝石を散りばめたような夜景を眺める。

『夢みたい。』

『なんで?』

『幸せすぎるもの。』

この1年 幸せなことばかりじゃなかった。

大好きな人のもとに嫁いだのにこの幸せを手放そうとした私

酒蔵での仕事と家事に追われる日々の中で自分を見失っていたこともあった。

でも どんなときだって京介さんは私にストレートに気持ちを伝えてくれて

『璃子。』

『…んっ。』

この冷たい唇から紡がれる言葉は一度だって私を裏切ったことはなかった。


『風呂入ろっか。』

円形のジャグジーが備えてある真っ白な浴槽に一人で浸かると

『ほれ。』

『わぁ。』

京介さんはベッドに散りばめられていたバラの花びらを湯船にパラパラと落として

『女はこういうの好きなんだろ?』

『“女”はじゃなくて“璃子”はでしょ?』

口を尖らせ浴槽の隅で相変わらず踞る私を引き寄せ 壁に備え付けてあるボタンを

パチン

『え…真っ暗だよ?』

『ちょっと待てよ~。次はこのボタンを…』

『わぁ 綺麗。』

浴槽の底から淡い光がバラの花びらが浮かぶ水面を照らして

『それとこのボタンを…と。』

『わぁ。』

柔らかな水泡が私たちの体を包み込む。

『これなら見えねぇだろ?』

二人だけの幻想的な空間に私の心は少しだけ解放される。

『いつになったら普通に入ってくれんのかねぇ。』

彼の胸に寄りかかりながらいつものように他愛もない会話をしてるつもりだったけど

『ベッドの上だと平気なのに?』

やっぱり彼のペースにのまれて

『愛してるよ。』

耳元で囁くように言葉を紡がれると

『…んふぅ。』

一気に体の力が抜けてしまう。

『覚悟は出来てるんじゃなかったっけ?』

意地悪な彼に身を捧げる夜

彼に愛されたいと首に巻き付けた腕は少し積極的すぎたかな。

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