続・あなたの色に染められて
第9章 Present from God
『昨日から用意しておかないからですよ!』
『ゴメンゴメン。』
豚汁組とやらに璃子が正式に加入して2度目の球納め
『これじゃ遅刻も遅刻…大遅刻!』
『だから 悪かったって。』
スパイクを積み忘れた俺にさっきから璃子は頬を膨らませ唇を尖らせ
『新米さんは早く行くのが礼儀なのに!』
『だから謝ってんだろ?』
『なにその言い方~!』
胸の前で腕まで組んで睨み付ける。
沙希の一件以降 敬語を禁止して(←怪しいときもあるけど…) 背伸びをしなくなった璃子は振る舞いが少し幼くなった。
…っていうか 多分これが等身大のコイツなんだと思う。
『そんな言い方するならもう知らないんだから。』
『だから~。』
わざとらしく首をプイッと背けてクリスマスで彩られた街の景色に目を向けて俺の頬を緩ませた。
コイツはどういうわけか球納めっていう一年の締めくくりの行事を大切にしてくれて
この日に休みを取るために下手すりゃ俺より働いてた。
だから 最近は家に帰ると疲れきっていて少し顔色も悪いぐらいで
『なぁ 機嫌直せよ。』
『フンだ。』
でも 今日は朝から顔色もよくお喋りも弾み
『ほれ 手繋いでやるから。』
『そんなんで騙されないもん。』
表情をコロコロと変えた。
でも…
『おまえ顔色悪いぞ?』
球場の駐車場に車を停めて荷物を取り出していると 胸元を擦りながら深呼吸を繰り返すコイツ
『酔ったか?』
『ちょっと調子に乗りすぎちゃったかも…』
舌を出して肩をすくめるおまえは心配ないと笑顔を見せる。
俺は璃子にユニホームを着せながら
『忘年会も出るんだろ?少しおとなしくしておけよ。』
『はぃ…ゴメンナサイ。』
背を撫で やっぱり働かせすぎだと反省する。
**
俺の名前に背番号を背負った愛してやまない奥さんの手を取りまずは監督への挨拶
毎年のことながらいまだに緊張してしまうのは この監督を尊敬してるから
そして 暫しのお別れ
『じゃ、あとで迎えに来るから。ケンタ行くぞ!』
『頑張ってねぇ!』
璃子はケンタとハイタッチすると蒼白い顔のまま魔女たちの中に吸い込まれていった。
…無理しなきゃいいけど
『京介、早くキャッチボールしようよ。』
『おまえは相変わらず生意気だな』
でも 魔女たちがいるから大丈夫か…