続・あなたの色に染められて
第9章 Present from God
何度も何度も説明書を読み返し
『順番に赤い線が…』
何度も何度も手元の検査薬を確認した
『間違えじゃないよね?』
この球場のトイレは綺麗だといつも思っていた。
真新しいわけではないけど清潔感があるそんなトイレの一番奥
『…。』
私は今そこで美紀が買ってきてくれた検査薬を見つめていた。
何度見ても何度読み返しても私の手の中にある検査薬には確かに2本の赤い線が行儀よく並んで
『…授かった…ってこと?』
いや待てよ…私は最近メチャメチャ忙しくて食事もろくにとれないような日々を送っていたんだ。
…生理不順ってことはない?
自問自答することもうどのぐらいだろ
別に慎重派じゃないけど間違えるわけにはいかないとても大切なこと
そうだ!美紀に見てもらおう。
美紀は看護師だし一児の母だしこういうことは詳しいはず
そうと決まれば検査薬を握りしめ颯爽とトイレを出るんだけど
『…ウッ…』
…やっぱりこの匂いはキツイ
口にタオルを当てていても僅かに感じてしまえば嘔吐いてしまう。
でも そんな私のことなんかお構いなしに
『出てきた!』
な…なに?!
お姉さまたちは私を見つけると一斉に取り囲み矢継ぎ早に質問して
『どうだった?』
『わ…わかんない…』
その真剣な眼差しに私は一歩後退してしまうほどで
『はぁ?わかんない?…いいからちょっと見せてみなさい。』
ボスに検査薬を差し出しみんなの視線にさらすと…
目を輝かせ腕を空に向かって突き上げ
『やったー!』
『おめでとう!』
『偉い!よくやった!』
『い…痛いです…』
みんな私を抱きしめてくれた。
『ホント…ですか?』
『ほら ここにちゃんと2本赤い線が出てるでしょ?』
上から見たってそっと触ったってなんにも変わらない私のお腹に
…やっと
『おめでとう…璃子。』
『美紀ぃ~。』
…やっと 京介さんの子を宿すことができたんだ
『ありがと…ありがとうございます…』
今まで支えてくれたいつものメンバーに何度も頭を下げる
…けど
『さて…どうやって京介に教えるかよね。』
『今呼んでくる?』
『それじゃつまんない。』
おねえさまたちは早速輪になりヒソヒソと会議を開き始める。
私はと言えば…
『ウッ…ッ…』
この匂いに勝てなくてまたトイレに駆け込むのだった。