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続・あなたの色に染められて

第9章 Present from God


『璃子見なかった?』

『あれ?魔女たちの所にいないっすか?』

『それがいねぇんだよ。』

ベンチにスタンドに魔女たちの所にと 球場の中を10分近く探し回っていた。

…どこ行ったんだよ

毎年MVPを狙えんじゃねぇかってぐらいよく打つアイツが打席に立たねぇなんて

『参ったな…』

俺はもう一度魔女たちのところに顔を出すと

『あれ?さっき京介探しながらベンチに入ってったよ。』

『マジかよ。』

…ったく…本当に世話のやけるヤツ

俺はスパイクを掻き鳴らし急いでベンチに戻ると

『京介さん急いで!璃子ちゃんの番ですよ!』

『…あのバカ。』

俺を置いて勝手に打席にスタンバイ…ってあれ?

『どこ?』

『あそこです。』

ニヤつく直也が指差したその先

『はぁ?』

あれだけ探したのに呑気に手なんか…っていうかアイツ バカじゃねぇの?

「選手の交代をお知らせします…」

ハァ…

幸乃さんのアナウンスを背に受けながらマウンドへと足を向ける。

『あのなぁ。おまえにピッチャーは務まんないだろ?』

グローブをはめて微笑む璃子に大きな溜め息を溢した。

*

…もう大袈裟なんだから

私がトイレの中で苦しんでいる間におねぇさまたちは勝手に決めて勝手に実行して

…ほら京介さんが怒っちゃったじゃない

マウンドに向かいながら大きな溜め息を溢し私を迎えに来た。

でもね その後ろで流れるアナウンス 耳に届いてる?

『…ウフフ。』

幸乃さんがウグイス嬢になりきって今から発表するよ。

「ピッチャー坂本くんに変わりまして…」

『迷惑だから降りろ。ほら邪魔だって…』

…聞いて

「お腹に赤ちゃんがいることが今日判明した…」

『ほら!』

「…森田璃子ちゃん!」

『…!?』

**

…今何て言った?

スタンドからは大きな拍手と俺をヤジる声

璃子は顔を真っ赤しながらクスクスと笑って腹に手を添えていた。

『ホントか?』

『…はぃ。』

『おまえの腹に…?』

『…みたいです。』

人は嬉しいと言葉より行動なんだな

『ちょ…京介さん!みんなの前ですよ!』

そんなの知らねぇよ

『…苦しいですぅ。』

今俺は愛してやまない奥さんとまだ見ぬ愛しい我が子を胸に抱いている

『ありがとう…ホントにありがとな。』

野球の神様がいるこの神聖なるマウンドの上で…

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