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続・あなたの色に染められて

第10章 マタニティ・ライフ


…なによ。あんなに鼻の下伸ばしちゃって

『はい部長…いつもお世話になってます。』

『あ…すいませんユカさんまで。』

たしか去年のバレンタインもこんな感じだった。

入れ替わり立ち替わり訪れる従業員たちのおかげで京介さんの足元にある紙袋はお昼休みを待たずにもう満杯になっていた。

『部長~私たちもいいですか?』

事務所にいる他の男の人には『女子従業員一同』なんて付箋を貼った大きなBOXチョコしかを用意してないくせに

『お返し期待してますんで!』

『私もぉ!部長のお返しセンスいいんですよね!』

フンだ…そのお返しは嫁である私が選んでるんですけど…なんて言えたらどれだけ楽だろう。

去年 この光景を目にしたときはなんとも思わなかった。

でも 先日美紀がニヤリと微笑みながら言った“妊娠中の浮気の確率…”という言葉が頭をグルグルと回ると私は小さな溜め息を漏らした。

『あっ!お返しにランチをご馳走してくれるって言うのはどうですか?』

『え~ランチなら部長と呑みに行きたーい!』

滅多に事務所に顔を出さない倉庫担当の女子社員が頬を染めながら彼と話しているのを見ると、頭の中にあの言葉がグルグルと回り始める。

…浮気されたら困るもんなぁ

まだ覚悟を決めきれない私は遠回りをして自分の席でお弁当箱を開くと

『モテるダンナを持つ嫁さんは辛いねぇ。』

クスクスと笑いながら風間くんが私の顔を覗き込んだ。

『うるさいなぁ。風間くんだってもう袋いっぱいじゃない。』

私と風間くんの席の間にも大きな紙袋。

そこには色とりどりの包装紙に包まれたチョコやらお酒やらが入っていて

『俺は誰かさんと違って独身ですから。』

ケラケラと声に音符を走らせてコーヒーカップに口をつけた。

『はいこれ。』

『何?俺にもくれるの?』

『まぁ一応…』

そして私も義理チョコと言う日頃の感謝の気持ちスッとスライドさせる。

『でもさぁ、ここに嫁さんいるのにあの量ってすげぇよな。』

『うるさいなぁ。』

『あ…璃子ちゃんまたヤキモチ妬いてんでしょ?』

『だからうるさい!』

私は大きなおにぎりを頬張ってジロリと睨み付けると またそれを面白がってケラケラと笑い出す。

…浮気される前に覚悟を決めきめなきゃ

また 頬を染めて彼の前に立つ女子社員を見ながら溜め息をついた。

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