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続・あなたの色に染められて

第2章 幼馴染み


『沙希ー!悪いんだけど午後までに商品の在庫確認してきてくれる?』

『午後までね、了解~。』

京介さんから在庫確認表を渡されると元気よく返事をする沙希さん。

ここに勤めてまだ2週間だと言うのに学生の頃にバイトをしていた経験を生かしてか フットワークも軽い。

おまけにあの明るい性格だから事務所のみんなにもあっという間に溶け込んだ。

でも 何故だか私はそんな彼女に心を開けないでいた。

『沙希さんって仕事早いよね。』

『そう パッパと動いてくれるから助かるよな。』

営業事務に配属になった沙希さんは持ち前の明るさと手際の良さで営業さんたちの信頼を一気に集めていた。

『沙希が来てずいぶん楽になったもんな。』

『またぁ!調子いいこと言っちゃってぇ!』

そう 京介さんとの近い距離感に私の心は落ち着かない。

その原因はプライベートにもあった。

『明日 沙希が暇なら和希連れてグラウンド行く?』

『嬉しぃ!この間すごい楽しかったって興奮してたから。』

そう 先週から仕事の私を抜いて3人でグラウンドに行っている。

『じゃあ 朝8時に迎えにいくから。仕度ちゃんとしとけよ。おまえ遅いから。』

『うるさいなぁ。少しだけでしょ待たせたの。』

野球が大好きな和希くんにボールを触らせてあげたいと京介さんが誘ったから

『璃子ちゃんは…。』

『私は仕事なんで 楽しんできてください。』

酒蔵見学は土日がメイン。こんな不純な動機で仕事を休むことなんて出来ない。

『璃子 明日夕方まであっちにいるから弁当作れる?』

どうせ私の分も作るからと快く返事をしようとすると

『いいよ 私が作るよ。』

何の嫌味もなく笑顔で任せてと親指を立てる沙希さん。

『…イヤ…私の分も作るので…。』

『いいのいいの!気にしないで!おにぎり2、3個多めに作りゃいいんでしょ?』

こうなると私は引き下がるしかない。

『では すいません。お言葉に甘えて…。』

『任せといて!』

悪い人じゃないのはわかってる。

でも…何だろう…。

私がのんびり過ぎる性格なのかな。

沙希さんは誰からも頼られる姉御肌…テキパキと物事を判断できて実行力があって

私の足りないところを全部持ってる気がして

…今週も一人で出勤か…。

完全にヤキモチを妬いてる心の狭い私がいつもそこにはいた。

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