続・あなたの色に染められて
第10章 マタニティ・ライフ
♡July♡
『あっ!見て見てあそこ!モカソフトって書いてある!』
『ほら走るな~!』
産休に入りゆっくりした時間を送るおまえを連れてきたのは梅雨も明け猛暑日が続く東京よりも過ごしやすい避暑地の軽井沢。
ここは直也たちが結婚式をあげた場所で俺たちがはじめて旅行に来た大切な場所。
『京介さん食べるでしょ?』
あのときはクリスマスの雪深い頃でメインストリートの開店している店も疎らだったけど さすが日本を代表する避暑地、夏になればこの涼しさを求めて訪れる観光客で賑わいでいた。
『モカソフト二つ下さい。』
前回は本店までは来れなかった地元じゃ有名なコーヒーショップのモカソフト。
いよいよ妊娠9ヶ月の終盤戦に入った璃子はこのソフトクリームをまた食べたいという事で旅先をここ軽井沢を選んだ。
『う~ん!やっぱり美味しい!』
産休に入ってから穏やかな日々を送るコイツは少し顔がふっくらとし始めて
『これなら何個でも食べられそう。』
一段と幼い顔っていうのかな プニプニほっぺが愛らしい顔つきになっていた。
『わぁ 可愛い!』
妊娠して洋服を制限されたって女はオンナ。腹が大きくても買い物好きは相変わらずで
『おまえ男でもピンク着せる気?』
『デザインが可愛いって言っただけです。』
自分の洋服は選ばなくても産まれてくる我が子のために訪れたアウトレットモールではベビー専門店に足を向け
『白なら平気かな?』
靴下やら産着やら竜兄のところからたくさんお下がりを譲り受けているのに
『平気じゃねぇの?』
自分でも揃えたいんだよな。一枚ずつ素材の感触を確かめて吟味していた。
『なぁベビーベッドとかどうすんの?』
『それも香織さんが譲ってくれるって。』
暇をもて余した璃子のおしゃべり相手はもっぱら竜兄の奥さんの香織さん。
お互いの家を行き来しながら育児の大変さだとか実践形式で色々と教わってるようで俺は安心している。
『じゃあ、そろそろ宿に行くとするか。』
『はい!』
大きな紙袋1つ分ベビー用品を買った璃子はずいぶんと満足気に俺の手を取り指を絡ませ
『温泉温泉!』
声に音符を走らせ微笑むから
『一緒に入るんだからな。』
俺はその細めた目を見開かせる。
『温泉温泉!』
『もう一緒は無理ですから!』
形勢逆転。俺の得意技炸裂の巻。