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続・あなたの色に染められて

第10章 マタニティ・ライフ



着いた場所は前回とは違う森の中に佇む白いホテルだった。

チェックインの手続きをしているとフロントスタッフは

『マタニティプランですね。』

『マタニティプラン?』

首を傾げる私のお腹を見ながら微笑んだ。

『当館ではお子さまが産まれる前の残り少ないお二人のお時間を充実に過ごしていただくため 妊婦さんに特別なプランを用意しておりまして…』

差し出されたパンフレットを覗き混むと

食事には有機野菜がふんだんに使われ、貸しきり風呂も優先的に予約…

そして

『チェックアウトも12時…』

『お腹の赤ちゃんのためにもゆっくりと過ごしてください。』

また やられたんだ。

京介さんはいつも知らない間に私にとびきりのプレゼントを贈ってくれる。

『では お部屋にご案内いたします。』

スタッフに案内された部屋は言葉通りのんびりと過ごせそうなお部屋

『気に入ってくれた?』

『もちろんです!いつもありがとうございます。』

私の体をすっぽりと包み込んでくれる低いソファに体を預けながら京介さんにお礼を言うと

『おまえ最近また敬語が復活してきてるよな。』

『…へ。』

顎を人差し指で持ち上げられ射抜くような瞳に見下ろされる

…ヤバい…これは不味いパターン

『いや…その…すごく感動したので…お礼はちゃんとした方がいいのかと…』

なんて今さら言っても後の祭り…

『…んふっ。』

唇を噛みつかれるように塞がれると私は動けなくなる。…彼に支配される

んだけど…

突然塞がれた唇は意図も簡単に離されて

『なーんてな。』

髪を撫でながら優しく微笑む。

『…っ…もう!』

胸をドンと突いてもクスクスと笑うだけの京介さん。

『こんなに緑に囲まれてんだ。ゆっくり過ごそうぜ。』

もう一度引き寄せられると甘い口づけをかわした。

**

『美味しかったぁ。』

早めに夕食を終えて貸しきり風呂を予約している時間までのんびりと部屋のテラスのベンチに並んで座ると

『はいどうぞ。』

京介さんはワインを嗜んで

『じゃ、璃子もどうぞ。』

私は炭酸水で我慢して

『静かだね。』

『森の中だからな。』

視線が重なると不思議だね。

『幸せだね…』

『あぁ。』

自然と唇も重なる。

『もっと幸せにしてね。』

『当たり前だっつうの。』

何度も重なった。

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