続・あなたの色に染められて
第10章 マタニティ・ライフ
…チャポン
湯船に身を沈めていつものように京介さんの胸に背を預けると彼の手が私のお腹をそっと包み込んだ。
『熱くないか?』
『うん。』
最近二人でお風呂に入ると私のお腹は大きく波打つ。
『今日は動くかな?』
『どうでしょう。』
大きく張ったお腹のアチコチをトントンと叩いてみると
『あ。』
『今動いたよな。』
京介さんはその場所を優しく撫でる。
『早く逢いたい?』
『そりゃ逢いたいよ。』
お腹に添えている私の手を包み込むと指を絡めて
『空、見上げてみろよ。』
テラスに出ていたときは雲で覆われていた夜空
『すごーい!降ってきそうだね。』
いつの間にか雲は何処かへ消えて満点の星空が望めた。
『おまえ 流れ星に願いしたことある?』
『アメリカに居たときに一度だけあるかな。』
それは寂しくて苦しくてどうしようもないときだった。
『その願い叶った?』
あのときは別々の場所で違う色の空を見上げていたけど
『叶いましたよ。お嫁さんにまでしてもらいましたから。』
今はこうして二人でお腹に手を添えながら同じ空を見上げられる。
『俺さ 後悔してることあるんだ。』
『後悔?』
京介さんは私の頬に頬を添えながら
『新婚旅行連れてってやれなかっただろ。』
小さな声で掠れた声でそう呟いた。
『新婚旅行ですか…。そういえば行ってないですね。』
そんなこと全然気にもしていないのに
『いや…やっぱさ。無理してでも行くべきだったよ。』
京介さんは私をそっと抱き締めながら
『ごめんな。』
素直に言葉を紡いでくれた。
『だったら…この旅行を新婚旅行にしちゃいませんか?』
『は?軽井沢に一泊だぞ?』
確かに結婚に憧れてる独身時代はヨーロッパやハワイに憧れたけど
『いいじゃない。だってこんなに穏やかなときを二人で過ごせてるんですよ?』
今の私は場所なんてどこでもかまわない。
『その代わり…この子たちが産まれて巣立ったら二人でのんびり行きたいな。』
『フルムーンか。』
…ハネムーンじゃなくてフルムーン。
『おまえ可愛いバアちゃんになるだろうな。』
『そう?』
『可愛い璃子バアちゃんとフルムーンか。それも悪くねぇな。』
これから先…きっと50年後も私たちはこうやって手を取り合って笑っていられるよね。