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続・あなたの色に染められて

第11章 Hello! My Baby!!


『ごちそうさまでした。』

京介さんはいつものように手をパチリと合わせると自分の食器を持って席を立った。

その瞬間

…イタタタ

やっぱりだ。

時計に視線を写すと21時40分

一番始めに違和感を感じたのは21時ちょうど、次はテーブルにつく直前の20分。

お腹に手を添えて小さく深呼吸をする私は確信した。

『京介さん…』

『あ?』

私の食器まで片付けようと手を伸ばすその手を掴んで

『陣痛…始まったかも。』

『えぇ!!』

伝えれば予想通り…目をキョロキョロさせて髪を何度も掻き上げて


『璃子いいか?落ち着け…俺がついてるからな。』

たぶん 落ち着かなきゃいけないのは京介さんの方

『えっと…病院に電話!』

『京介さん?』

想像はできてたけど…

『何番だっけ?』

やっぱり可笑しいよね。

『京介さん!』

『なんだよ!』


**

視線が重なると璃子はフワリと微笑んで

『10分間隔になったら電話するんでしょ?』

オロオロとして頼りない俺を現実に引き戻した。

『痛くねぇの?』

『ずっと痛いわけじゃないよ?たぶん次は20分後かな。』

璃子は手帳を広げると“21時40分”と書いた。

『たぶん 今20分間隔で陣痛が来てるから動ける間にお風呂入ったりして仕度するから 京介さんは今日の晩酌は控えてもらえます?』

『も…もちろん。』

璃子は寝室に入ると用意していた入院用のボストンバッグをソファーの横に置いて

『次の陣痛が終わったらお風呂入るね。』

『あ…あぁ…』

キッチンに立ち食器を洗い始めた。

『おい…俺がやるから。』

『大丈夫です。痛くなったら止めますから。』

どうして女はこんなに強いんだろ。

璃子の横に立ち俺は洗い終わった食器を拭いていく。

『あのね…もしかしたら今日かもよって先生に言われたの。』

『何で?』

『子宮口の確認するとその刺激で陣痛が始まる人が多いからって。』

『そか…』

出産は俺の知らないことばかり。

『あ…イタタタ…』

『え?!』

洗い終えると璃子は俺の背中にギュッとしがみつき

『スーハースーハー…』

痛みを逃すように深呼吸をする。

『がんばれ…』

俺は廻してきた力の入った小さな手を擦ることぐらいしか出来ない。

『がんばれ…』

時計の針はちょうど22時を示していた。

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