続・あなたの色に染められて
第11章 Hello! My Baby!!
『うぅ…』
心配する俺をよそに強行突破してひとりで風呂に入った璃子は一度湯船で痛みを逃し
『がんばれ。』
只今 俺の腕の中で何度目かの痛みと戦っていた。
腰を擦り手を擦り 俺はただ応援するしか出来なくて
『…今何分?』
『22時半。少し短くなってきてるな。』
不甲斐なさを感じてばかりだった。
『京介さん…』
『ん?』
『ありがとう。』
当たり前のことをしてるだけなのに璃子はさっきから俺を気遣う。
『少し寝ろよ。これから勝負だろ?』
寝れたってまた数分後にはこの痛みと戦う。
『俺も一緒に寝るから。』
少しでも体を休ませたくて璃子の手を引きベッドに潜り込むと 華奢な足を俺の足に絡め、手を握り不安気に微笑んだ。
…ダメだ…俺が頼りねぇからコイツ無理してる
俺に何が出来るか…
長谷川さんも直也も佑樹もそして兄貴もとにかく支えろって、それしか出来ないからって苦笑いしてたっけ。
『…きた。』
『がんばれ。』
小さな小さなこの体。
『スーハー…』
眉間にシワを寄せながらなんとか深呼吸をしようと口を開け顎を上下に動かして
『がんばれ。』
俺は璃子に見つめながら必死に微笑んだ。
*
…痛いぃ
最初の違和感から数を重ねる度に痛みはどんどん激しくなっていった。
ベッドの上 京介さんは陣痛がくる度に時計に目をやり時間を手帳に書いていく。
『がんばれ。』
力強かったり優しかったり心配そうだったり…この「がんばれ」は彼の心の声を聞いてるようだった。
…チュッ
ひとつ波が過ぎ去るごとに彼は私の顔のどこかに唇を落とし頑張ったとご褒美をくれる。
『ありがと。』
このご褒美のために私は痛みと戦えてるのかもしれない…そんな優しいキスだった。
*
『そろそろ10分間隔だぞ。』
時計の針は日を跨ぎ、只今深夜2時…
京介さんは痛みと戦う私に付き合ってほとんど眠れていなかった。
『もしもし…』
陣痛が治まっている短い時間を利用して私は少しずつ用意をしていく
『来て下さいだって。』
『痛いぃ…』
彼の背に捕まり襲いかかってくる鈍痛を深呼吸して逃した。
あと少し…私たちの宝物に出逢える
『…もうすぐ逢えるね。』
『だな。早く出てこい。』
京介さんは私のお腹にキスをした。
今晩も 外は生ぬるい夜風が漂う熱帯夜だった。