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続・あなたの色に染められて

第11章 Hello! My Baby!!


『少しでも食べた方がいいですよ?』

痛みの中 朝食を出されても

『いらない…』

なかなか食事に手が伸びなかった。

『ヨーグルトだけでも食うか?』

京介さんはヨーグルトを一口掬い私の口もとに差し出す。

食べなきゃ出産を乗りきれないのはわかってる

けど…

『イタタタ…もうやだ…』

『少し短くなったぞ。がんばれ。』

なかなか進まない出産に私の心は折れ始めていた。

*

なんとかヨーグルトを食べ終えた9時ごろ

…トントン…スーっ

開いた扉の向こうから

『璃子~!』

『ママ~!』

璃子が一番甘えられるお母さんが満面の笑みで入ってきた。

大きなバッグをドシリと足元に置くとすぐさま腕捲りをして

『で、何分間隔なの?』

『7分間隔…イタタタ…』

璃子の腰をせっせと擦り出した。

『まだまだこれからよ。』

『痛~いっ!』

『はい吸ってー!吐いてー!』

璃子は俺のTシャツを掴みながら必死にお母さんの掛け声に合わせて深呼吸をした。

やっぱり出産って摩可不思議

人間ってひとりで勝手にこの世に生を受ける訳じゃなくて

『ほら まだまだ!吸ってー!吐いてー!』

俺も璃子もこんな苦しみの果てにこの世に産み落とされたわけで

『…痛いよぉ。』

『赤ちゃんも苦しんでんだよ。』

男にこの痛みは耐えられないっていう言葉を改めて胸に刻み

『璃子…がんばれ。』

Tシャツを力強く握る小さな手を包み込んだ。

**

『これなら食べれるでしょ?』

『うん…美味しい。』

突然現れたママは「出産は体力勝負よ!」と、一口サイズのおにぎりをたくさん作ってきてくれていた。

『少しでも食べて最後の難関に備えないと。』

不思議なものでママが作ってくれたおにぎりはパクパクと口の中へ入っていく。

『お茶でも飲む?』

『うん。』

気付けば2つ目のおにぎりに手を伸ばしている自分がいた。

『それにしても相変わらずいいダンナさんね。』

京介さんはママが来てくれたから酒蔵に少し顔を出すとさっき病室を出た。

『そう?』

『そうよ。あんなに一生懸命璃子を世話して…そんな言い方したらバチが当たるわよ。』

『あ…イタタタ。』

『ほらバチが当たった。』

枕を抱いてママの掛け声に合わせて深呼吸して

『がんばれ!璃子!』

ママの偉大さを改めて感じた。

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