続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
『恵介 着いたよ。』
明日 お宮参りをする私たちは京介さんに迎えに来てもらい一ヶ月ぶりの我が家に戻った。
…カチャ
恵介を片手で抱きながら玄関を開けると
『ただいま~!』
大きな声を出してしまうのはいつの間にか実家よりも落ち着く場所になったってことなのかな。
独身時代の時のように靴がアチコチに散らばった玄関を抜けリビングに視線を向けると
『え…どうしてこんなに散らかってるの?』
『これでもだいぶ片付けたんだぜ?』
両手に荷物を持った京介さんに押されるようにリビングへと足を踏み入れた。
…マジですか
足の踏み場もないってほどではないけど テーブルにはビールの空き缶が無数に整列し ソファーには新聞やら雑誌やらが無造作に置かれ
『準備万端だって言ってたのはここだけじゃん。』
かろうじてソファーの横に置かれたベビーベッドだけが綺麗に整われていることが救いだった。
お部屋のお掃除から始めなきゃいけないなんて…
溜め息混じりに恵介の顔を覗くと
…ガラガラガラ
荷物を寝室へと運び入れた京介さんが家中の窓を開けた。
『いい風だな。』
ふわりとカーテンが揺らめき秋の爽やかな風がリビングを通り抜ける。
『恵介おいで。』
その風は膨らませていた私の頬を緩ませた。
『恵介、ちょっと散らかってるけど…ここがおまえの家だぞ。』
そう言うとベビーベッドに寝かせ私の肩を抱いた。
クリっとした大きな目で私たちを見上げる恵介は見慣れない景色と香りに少し戸惑っているのかな。
『これからパパとママと楽しくすごそうね。』
小さな手を撫でるとギュッと握り返してくれる。
『私 ちゃんと育てられるかなぁ。』
『大丈夫。俺も手伝うから…ってこの汚さじゃ説得力ねぇか。』
『ううん そんなことないよ。』
よく見れば揺らめくカーテン越しにはYシャツやバスタオルがヒラヒラと舞っていて
『洗濯とキッチンは頑張ってくれてたんだね。』
『まぁ おまえの城だけは綺麗にしとこうと思って…』
…不器用だな
毎日 残業ばっかりで家のことやるのだって大変だったはずなのに
『ありがとう。』
散らかり放題な部屋だけど 独身時代とは違ってキッチンと洗濯物だけは気にかけてくれてたことで
『お帰り。』
『ただいま。』
やっぱりここに帰ってきてよかったと素直に思えた。