続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
『お疲れさまでした。』
『いや、疲れたのはおまえだろ。』
両家揃っての恵介のお宮参りを無事に終え戻ってきたのはオレンジ色の光が差し込む夕刻の時間
やっと落ち着いた私たちはソファーに腰掛け おっぱいを美味しそうに飲む恵介を眺めていた。
『もう寝たのか?』
恵介もたくさんの人に囲まれて疲れちゃったのかな。おっぱいも程ほどに気付けば眠りについて
そっと恵介をベッドに寝かせ ぐっすりと眠っている姿を肩を並べながら眺めている幸せな時間
『あの…一つお願いがあるんですけど…』
私は絡めた指に視線を置きながら いつか話したいと思っていた話を口にした。
『あのね、私…パパママって呼び合いたくないんです。』
それはずっと提案したかったこと
『京介さんは私のパパじゃないし、私は京介さんのママじゃないですよね。』
当たり前のことなんだけど 今まで通り“女”として京介さんに寄り添っていたいなんてワガママかな
『あの…』
私は顔をあげて京介さんの瞳をじっくりと見つめると素直に思いを告げた。
『お婆ちゃんになっても“璃子”って呼んでくれませんか?』
京介さんは何を言い出すのかと目を丸くするから
『べ…別にイヤならいいんですけど…』
さっきの勢いはどこへやら…また俯いてしまう。
でもね 繋いでいた手を肩に回され広い胸に抱き寄せられると
『なに当たり前のこと言ってんの?』
『…え』
柔らかな声が肌を通して私の耳に届くと 京介さんが初めて声をかけてくれたときのように胸が高鳴った。
『いいんですか?』
『いいも何も俺はそのつもりだったけど?』
これだけ長い年月を共にしているのに頬を染めるなんておかしいかったかな。
『おまえなぁ…』
『な…なんですか?』
そんな顔して俺を見んなっつうの
『ちょ…ちょっと…んっ…』
腕を伸ばして俺を制したって 捕らえた唇は舌を素直に受け入れてる
『あの…ダメなの…』
『大丈夫だって。』
恵介にチラリと視線を移した大きな瞳を潤ませるほど酔いしれたのなら 大好物を我慢してた俺の気持ちもわかるだろ?
『チョット!』
『うるせぇ。』
手足をバタつかせ いまだに恥ずかしがる璃子の手を強引に頭上に押さえつけると
『だから…まだダメなの!』
『は?』
低い声で睨み上げ足まで使って制する璃子がそこにいた。