続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
『恵くんもう少し飲まないと…』
『また寝ちゃったの?』
『そうなの…起きて~恵くん。』
一ヶ月検診に行った後から璃子は少し神経質になっていた。
『飲まないと大きくならないよ。』
頬を突つかれる恵介は気にする程ではないが体重の増えが少し芳しくないらしい。
『粉ミルク用意しようか?』
『大丈夫。京介さんはもう遅いから寝て?』
時計を見上げれば日付はとっくに回っていて
『じゃあ…あんまり無理すんなよ。』
『うん…』
検診に行ってから一週間。毎晩こんな夜を過ごしていた。
…ハァ
奴らが言ってたとおり璃子が帰って来たっていいことなんて全然ない。
まぁ、わかるよ
オレは一端の大人で 恵介はまだ乳飲み子
『あ~ぁ。』
璃子が居なきゃ恵介は生きてくことすらできないんだ ってことぐらい
『さて、今日も寂しく一人で寝ますか…』
一人で寝るには大きすぎるベッドに身を沈め布団をガバッと掛け
『つまんねぇの。』
頭までスッポリ被る俺は璃子の香りがする枕を抱いて目を閉じた。
*
…カチャ
恵介を抱いて寝室に入ると
『寝てる…よね。』
京介さんの寝息が聞こえた。
『フッ…また枕取られてるし。』
ベッドサイドに腰を下ろし少し伸びた前髪をサラリと撫でてみる。
『パパはすっかり夢の中ですねぇ。』
ふと見上げた時計の針は京介さんが寝室に入ってから一周回っていて
『キミは今日は早く寝てくれますか?』
目を輝かせ眠る気配のない恵介に問いかけた。
布団からはみ出している大きな手をそっと握り
『おやすみなさい…』
夜中にまた泣き出すと京介さんに迷惑をかけるので私はまたリビングへと足を向ける。
『ちょっと待っててねぇ。』
バサリと広げた来客用の布団をベビーベッドの前に敷いて
『OKだよ。』
また恵介を抱き上げる。
パクパクする薄い唇は私とお話がしたいのかな
『まだ寝ないの?』
不意にニコリと微笑むと…不思議だね。
眠れない夜のこととか
愛する人のぬくもりが欲しいとか
体重の増えがあまり良くないこととか
…どうでもよくなる
私の隣にそっと寝かせて小さなお腹を撫でるように叩き京介さんに似たおでこにキスをする。
『おやすみ…恵介。』
多分また3時間後には起こされる。
でも…いいんだ。
可愛くて可愛くて仕方がないから。