続・あなたの色に染められて
第12章 新しい生活
カタ…コト…
…ん?
京介さんがお休みの週末。
ドシッ!
『うわっ やべぇ。』
私は珍しく夜泣きすることなく眠る恵介とリビングに敷かれた布団の中で聞き慣れない音を耳にした。
コポコポ…
…今度はいい香り…あれ?でも少し焦げ臭い?
コーヒーの香ばしい香りと少し焦げたパンの香りが夢と現実の狭間でさ迷う私の目を抉じ開けさせた。
コンコン…ジュワーッ
『うあっ 潰れた~。』
…これは京介さんの声?
体を起こして色んな音を奏でるキッチンに視線を向けると
『うーん…よし!こんなもんか。』
そこにはフライパンを握る京介さんがいた。
『…京介さん?』
彼は一瞬振り向くと
『おっ起きたか?もうすぐ出来るから顔でも洗ってこいよ。』
京介さんの口から飛び出す言葉に私は目をパチクリさせるけど フライパンを握る彼にはそんな余裕はないらしくまた視線を移した。
…なんだなんだ?
恵介を起こさないように布団から這い出てキッチンに歩み寄ると
『うそ…』
京介さんは大きな背を丸め黄身が崩れた目玉焼きをお皿に盛り付けていた。
『俺だってこのぐらいは…オットット。』
得意気に鼻を鳴らしシンクの中にフライパンを置くと
『恵介が起きる前に食っちゃおうぜ。』
私の背を押して洗面所に向かわせた。
…あれ洗濯機も
微かに聞こえる洗濯機のモーター音は空耳ではなかった。
『回ってるし。』
洗濯機の扉の中ではグルグルと衣服が回り
『どうなってんの?』
私はまだ夢の中に居るのかと冷たい水で顔を洗ってみる。
『うっ…冷たい。』
…ってことは
髪をくるりと束ねてクリップで止めて
『京介さん!』
洗面所からリビングまでの数歩を駆け足で向か
うと
『ほら食うぞ。』
未だに現状を飲み込めていない私に微笑みながら
『おはよう。』
『…おはようございます。』
と まだしていなかった朝の挨拶を交わし
『はい 箸。』
『あ…どうもです…』
『じゃ、いただきます。』
『いただきます…って、あの…これ…京介さんが?』
ダイニングテーブルには一口で食べるのには大きいレタスサラダに黄身が崩れた目玉焼きが乗ったプレートと焦げたトーストにミルクがたっぷりのカフェオレ
『見た目は悪いけど味は保証するから。』
満足気にトーストを噛る京介さんがいた。