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続・あなたの色に染められて

第13章 空と白球とキミと


『あ…ぃ…あわぅ…キャキャっ…』

『ご機嫌でしゅねぇ。』

魔女達が集まるスタンド席で恵介を御披露目する。

みんな一斉に私たちを囲みワイワイ始まるからどうなるかとヒヤヒヤしたけど

『キャッ…キャッ!』

私の心配をよそに恵介はお姉さま方に順番に抱っこされてご満悦の様子で

『愛想がいいね。これは璃子ちゃん似かな。』

『でも、この無駄に高い鼻とニヤッと笑う唇は京介よね。』

手慣れた手つきのお姉さま方の腕の中に次々と納まる我が息子

考えてみれば球納めのあの日、豚汁の臭いにやられていた私を一気に幸せな気分にしてくれたのはこの人たち

『京介デレデレでしょ?』

『ハイ。皆さんが想像してる以上にデレデレです。』

わざわざ小芝居まで打ってあの野球の神様のいるマウンドの上で京介さんに伝えたんだっけ

『どう?少しは夜寝てくれるようになった?』

『うん。最近は朝までぐっすりって日もあるんだよ。でもね、体重の増えが芳しくないみたいで…』

『そんなの大丈夫よ!』

『…はい?』

美紀に不安を吐露したのだけど 解答者は子育て経験豊富なお姉さまたち

『その子その子にあったペースがあるんだから気にしないの。』

『でも…』

『お腹が減ってたらもっと泣き喚いてるだろうし、こんなにキャッキャッ笑わないでちゅよねぇ。』

『うきゃ…うきゃ!』

育児書やネットを覗いてなんとか不安をぬぐい去ろうとして来た。

でも、生の声が一番で

『はい!』

それが信頼している人たちなら尚更なのかもしれない。

『たまには息抜きがてらに京介に連れてきてもらいなよ。』

『そうよ。宇宙人じゃなくて日本語ベラベラと話したいでしょ?』

『宇宙人…そうですね。』

このスタンドに来てから小一時間。恵介は未だに私の胸元には戻ってきていない。

一人ですべてを抱えていこうと思ってた私

『璃子~!オムツ取って~!』

『あッ…すいません!!』

私がいないと恵介はダメなんだって変に気張ってたのかな。

『久しぶり~オムツ取り替えるの。』

『いいんですか?』

『いいのいいの。やらせてよ。』

手際よく恵介と話ながら替えていく

『おっ立派なのもってんねぇ。』

『どれどれ?ホントだぁ!』

…はい?

お姉さまたちのようになれる日はかなり遠そうだけど、甘えられる場所があるってことはわかった。

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