続・あなたの色に染められて
第13章 空と白球とキミと
『…ウフフ。』
俺のカミさんは勝利の女神だ。
『何ニヤニヤしてんだよ。』
『いいの~ ねぇ恵くん。』
俺の胸に抱かれてる誰かさんと同じように口を開けて眠る恵介の頬を突っつく璃子は優勝にご満悦
『もしかして久しぶりに俺のプレー見て惚れ直した?』
『どうですかねぇ。』
たかが草野球かもしれない。でもオレ達 野球バカ軍団は今回も『優勝』と言う二文字に執着し、全員野球でその称号をもぎとった。
『ウソつけ。惚れ直しましたって顔に書いてあんぞ。』
『普通自分で言う?』
『俺は正直に口にしただけだけ。なぁ恵介。』
さすがにあの頃のように体は動かない。
けれど、応援に来てくれる家族や仲間に日頃の感謝を込めて…何て言ったら少し格好つけすぎか
『それよか、恵介は大丈夫だった?』
『はい。皆さんの腕のなかをぐるぐる回って、少しグズっておっぱいあげたらコテッと。』
『そかそか。』
時折 唇をムニャムニャと動かしながら幸せそうに眠るコイツの額を俺もそっと撫でる。
『でもね、京介さんが打ったときは大興奮だったんだよ。やっぱり野球好きの血が流れてるんですねぇ。』
『当たり前だろ。』
調子にのって顎を上げながら返事をするけど、恵介の初めての観戦にどうしても勝ちたかったって言うのが本音
…俺の子か
『いいお天気ですね。』
見上げれば真っ青な空
『いつかここの夕焼けを恵くんにも見せてあげたいなぁ。』
そういえば璃子はこの球場のスタンドから眺める夕焼けがお気に入りだった。
『見てくか?』
家事に育児に終われてるコイツは俺が外に連れ出さない限り 自然の豊かさを触れることも無くなっているのだろう。
『ううん、またにする。』
今日 璃子は祝勝会には参加せずこのあと久しぶりに実家に一泊する。
『じゃ、着替えてくるよ。』
そう言って恵介を預けようと腕を差し出した瞬間
~♪~♪
璃子のスマホが珍しく鳴り響く
『…え。』
『どした?』
璃子はディスプレイを見ると戸惑いながらも少し微笑んで俺にそのスマホをチラリと見せ
『はぁっ?!』
俺の断りもなく
『もしもし…』
出やがった。
さっきまで穏やかだった俺の心はその一瞬で嵐が吹き荒れる。
『うん、たっちゃんは元気?』
俺の顔を見ながらクスクス笑うコイツに大きな溜め息を落とした。