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続・あなたの色に染められて

第13章 空と白球とキミと


『どうしたの?…じゃねぇよ。』

あの頃と変わらないコロコロとまるで音符を奏でるような璃子の声に俺の頬は自然と緩んだ。

「だって 久しぶり!ビックリしちゃった。」

何年ぶりだろ。璃子の声聞くのって。

『ったく…久しぶり!じゃねぇだろ。』

「だよね…ウフフ。」

まぁ、昔のオトコと連絡取り合うのはおかしいとは思う。

でもさ、俺たち同じ釜の飯を食った仲間だろ?

その仲間にこんなメデタイことを報告もしねぇって酷くないか?

『おまえ、俺になんか報告あんだろ。』

「うん!あるある!あのね…」

俺から電話しておいてナンだけど これから幸せな話をしますって感じの声色に少しだけ溜め息を溢しながら耳を傾けた。

「私ママになったの!」

俺の傍にいるときはあんなに涙ばかり流していたくせになんだその声

『男だってな。』

「うん!」

おまえの声を聞くとやっぱり電話しない方がよかったか…

掛ける直前まで悩みに悩んだオレ。

やっとの思いで掛ける決心をしたのは 夜中までかかった長いオペを終え、まだ脳ミソが興奮状態のままだったから。

『先週久しぶりに学会で会ったサラから突然おまえの話を聞いたわけよ。そういうのって寂しくねぇか?』

女々しいか…

未だに俺はおまえよりいい女を見つけられなくて独り身を満喫してますなんて

「だって…」

少し声色を変えて責めるとそう、地球の裏側にいるおまえは今も昔も母親になっても頬を膨らませ唇を尖らせてるに決まってる。

「…ゴメンね。」

そして俺の機嫌を伺うようにポツリとまた違った音階を走らせた。

…ダメだな。俺はその声に…いや、いつまでたってもおまえには甘いんだな。

『おめでとう。俺にもお祝いの言葉ぐらい言わせろっつうの。』

*

『…ありがとう。』

「おぅ。」

相変わらずな彼の態度がうれしかった。

きっと向こうは真夜中の時間。手術が長引いたのか論文を仕上げているのか。

日々忙しく動き回ってる彼を考えると少しでも早く寝た方がいいのに

「元気そうだな。」

『うん…たっちゃんは?』

「元気だよ。」

『そか…』

少しだけ目を瞑って連絡をくれた彼を思う。

すると…

『ゴホンッ!』

…あ。

恵介を胸に抱きながら鋭い目で私を見下ろすダンナさま。

『アハ…アハハ…』

電話を切ったらこりゃヤられるな…

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