テキストサイズ

続・あなたの色に染められて

第2章 幼馴染み


後ろから回した俺の腕に璃子の涙が零れた。

『なに そんなに痛かったのか?』

女子日の痛みがどれ程のモノなのか想像もできない俺は抱き寄せたることしかできなかった。

『…違う。』

璃子は首を横に振りながら半身になって俺の胸に頬を埋めた。

『なんだよ どうした?』

最近 少し感じてた。

仕事に家事にお袋の代役…。俺が思ってた以上に璃子への負担は重く伸し掛かっていた。

いつも桜色に染まる白い頬は 最近青白く感じられるほど疲れが滲み出ていて

『いいから無理すんな。』

包み込んで痛みを堪える腰を擦ることぐらいしか出来ないオレ。

っていうか 俺が一番璃子をを大切にしなきゃいけないのに

『ゴメン。疲れさせてんのは俺だよな。』

家事だってお袋のことだって俺にも出来ることはたくさんあるのに

『ごめんな 璃子に甘えすぎてた。』

この小さな体を抱き寄せることしか出来ないけど

『今日は早めに寝ようぜ。おまえが寝るまでこうやって擦ってやるから。』

俺の腕のなかで何度も首を横に振り Tシャツの裾を握りしめる璃子。

小さいくせに誰よりも頑張り屋さんの俺のカミさん。

でも やっぱり俺はダメな夫だったんだ。

璃子の心の奥底の傷に気付くのはずっと先のことだったから。



***


優しく包み込んでくれる彼の腕の中で私は首を振り続けていた。

この涙の理由は生理の痛みでも仕事の大変さでもなんでもない。

くだらないただの嫉妬…

お風呂上がり ビール片手にキッチンの向こうから 今日あったグラウンドでの話を満面の笑みでいつものように話してくれたんだけど

先週と同じ そのお話のほとんどが

「マジで和希のやつ 素質あるかもしんねぇ。俺が教えたことすぐに吸収してさ…」

「バッティングも結構いけんだよ。まだまだだけどボールの見極めがいいんだよな。」

幼馴染みの子供の話。

トドメに沙希さんのお弁当が豪華だった…なんてもっと聞きたくない話まで

女子日だからかな…聞き流せばいいのに聞き流せなくて

私だけお仕事してたとか 赤ちゃんが今回もダメだったとか 女子日でお腹が痛いとか…勝手に負のスパイラルに陥って

『ゴメンな。』

ウジウジしてることなんか知らずに京介さんはただ心配して抱き寄せてくれたのに

今 彼の胸に頬を埋めているのは私なのにね

バカだな私って…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ