続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『璃子ちゃ~ん!』
『美紀!幸乃さん!お久しぶりです!』
休日の午後、京介さんにワガママを言って連れてきてもらった球場
『陽菜良かったね。チーちゃんもいるよ?』
偶然にもみんなが集まるなんて
『アンタ元気だった?』
『元気よ!…コホッコホッ。』
『どっちなのよ。』
『テヘヘ…』
ここはママでも奥さんでもない自然な笑顔に戻れる場所
秋と冬が混ざりあってる11月の始め
コンビニで買ったカフェラテを手にみんなとの会話を楽しむスタンド席
『酷いんだよ!直也なんか私に子供押し付けて自分はさっさと寝ちゃうのよ?』
『それって昇進して直也くんも疲れてるんじゃないの?』
『いいえ、昇進したって言っても全然お給料上がらないし、下手すりゃ私がフルで働いた方が稼げるんじゃないの?って感じだし…』
『美紀、ダメだよ直也さんにそんなこと言ったら。』
『言わないよ…はぁあ、璃子のところは良いよなぁ…家も建てたっていうのに車買い換えたんでしょ?』
『車検だったから…』
『あ~ぁ。私も玉の輿に乗れば良かった。』
『美紀…』
『なんてね。ここでしか愚痴れないの…許して。』
どこの家庭も一緒なのかもしれない。
結婚して長く付き合っていくと愛よりも情が増えると聞く。
そんな話を聞いたのはまだ太陽が高く上っていた夏の大会に優勝したあとの祝勝会でのこと
幸乃さんが寂しそうな顔してポツリと粒やいたのを聞き逃さなかった私
『璃子ちゃんのところはどうなの?最近京介くんもここに顔を出さなかったじゃない?』
『仕事が忙しくて毎日午前様なんですよ。ご飯もちゃんと食べれてないから京介さん少し痩せちゃって…』
グラウンドの片隅で恵介とキャッチボールをする彼を眺めると
『だからか…』
『へ?…コホッコホッ。』
『最近何かあったんでしょ?』
『な…ない…コホッコホッ。』
図星だからかたまたまなのか、咳はタイミングを図って出てくれない。
『私もそう思ってた。そんなに咳出てるのにここに来たってことは何かあったんだよね?』
この二人には隠し事なんか一生出来ないと思う。
『別に…』
『ウソ!顔に書いてあるわよ。ダンナさんが昔みたいに構ってくれません。って。』
『…。』
『璃子ちゃんは相変わらずねぇ。』
俯く私の背中を二人は優しく擦ってくれた。