続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『璃子の考えすぎなんじゃないの?』
一通り話をしてご意見番の答えを待った。
『私から見ると子供よりも璃子ちゃんのことが可愛くてしょうがないように見えるけどな。』
『そんなことないですよ。今日だって私だけ起こしてもらえなかったり3人でここに来ようとしたり…』
『それって璃子が咳してるからじゃないの?』
『ううん、この咳だって全然心配なんかしてくれないの。「薬のんで早く寝ろ」って毎晩言われて…大丈夫の一言もないんだよ。』
口を尖らせここ最近のモヤモヤを一気に吐き出す。
不思議なものでこんなに喋っているのに咳は出てこない。
『なんかわかる。薬のんで早く寝ろは正論だけど 大丈夫?とか気遣いっていうの?そういうのが欲しいんだよね。』
『そうなんですよ!風邪引いたって体は求めてくるくせにさっさと自分だけスッキリさせちゃって…』
クスクスと笑いだす二人
…あ
言い過ぎた。
『そこなのね、原因は。』
『イヤ別にそういうことじゃ…』
『そういうことなんでしょ?』
『…まぁ。』
たった一つのミスが自分を追い詰めた。
*
『京介、この後久しぶりに飲んでく?』
『いや 今日はちょっと…』
長谷川さんからの誘いを断るのは後輩として有るまじき行為なのはわかっていた。
『せっかく璃子ちゃんも来てるんだからいいじゃないですか。』
直也の言うとおり。久しぶりにいつもの居酒屋の座敷でワイワイ騒ぐのもいいかもしれないけど
『いゃ、璃子が風邪気味なんですよ。』
『そういえばさっき咳してたな。』
『アイツ相当疲れてるんです。だからその…今日は家族サービスっていうか、ファミレスでも寄って帰ろうかなって思ってて。』
少しでも家事を減らしてやれば寝る時間も確保できるんじゃねぇかって
『それなら次の機会にするか。』
頑張り屋のカミさんに俺が出来る小さなこと。
『すいません。』
でも、それもたまに迷惑がられてる。
今朝だって体調を気遣って少しでも長く…なんて思って璃子を起こさなかった。
それなのに「起こしてくれれば良かったのに」と頬を膨らます。
そして、家でゆっくりしてもらおうとチビたちだけ球場に連れていこうとすると「私だけ仲間外れだ」と俯いた。
有り難迷惑なのか…
『…ハァ。』
…女って本当にわからねぇ動物だ。