続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『クククっ…』
『何よ。』
中庭のベンチでキミの甘い香りを感じながら缶コーヒーを口にした。
『相変わらずだなと思って。』
キミはボクに対して心を開いてくれているのか頬を膨らませることが多かったよね。
『…突然現れるから。』
『イヤイヤ、昨日竜介さんに電話いれておいたよ?』
『そうなの?』
今度はこれでもかってぐらい目を大きく見開いて
『そりゃ 酒蔵のマドンナを口説くんだから社会人のマナーとして連絡ぐらいは入れないとね。』
毎年恒例のうちのワイナリーで開催する試飲会。
恵介くんを妊娠するまで 蔵のお酒の宣伝も兼ねて璃子ちゃんが毎年手伝いに来てくれてたんだけど
『頼むよ。璃子ちゃんに会いたがってるお客さんがたくさんいるんだよ。』
ママになってしまったから自由が利かなくなるのはしょうがないことなんだけど
『私は無理だって言ってるでしょ?』
それを諦めきれないからボクはわざわざ山梨から車を飛ばしてきたんだ。
『今の担当さんも勿論頑張ってはくれてるよ。でも璃子ちゃんが来てくれた方が売り上げだって変わるし、蔵のためにもなると思うんだよな。』
『…だから。』
溜め息混じりに無理だと顔全体の筋肉を使って表すけど 今日のボクは引き下がらないよ。
『恵介くんと陽菜ちゃんがいるからでしょ?』
『…まぁ、それもそうだけど。』
だって秘策を手にして来たんだから
『連れてくればいいじゃん。』
『はぃ?』
…どうかな?
『姉貴の子もいるし、旅行気分で二人を連れて来ればいいだろ。』
『…』
…どうだ?一瞬顔がパッと開けたように感じたんだけど
よし、ここからが勝負!
『日程は明日からの二泊三日。送迎は責任もってボクがやる。3人で寝れるようにクイーンサイズのベッドがある部屋をリザーブ済み。試飲会のスケジュールは子供の都合に合わせてくれて全然構わない。』
もう一息じゃないか?
『京介さんは今週末まで出張なんだろ?』
『…そうだけど。』
…あと少し
キミはまた口を尖らせて溜め息をひとつ吐く。
…すると
『璃子ちゃん、ここまで風間くんが言ってるんだ蔵のためにも一肌脱いでくれないかな?』
『お義兄さん…』
いつの間にか竜介さんも参戦してくれて
『大丈夫、京介には俺から言っておくから。』
キミの肩を叩けば答えは1つだよね。