続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『ですから…』
あれから 同僚への引き継ぎや支度などで走り回っていた璃子ちゃんと出発出来たのは陽も沈みかけた夕刻
『…竜介さんにまで言われたら断れるわけないじゃないですか。』
助手席のキミはやっと電話が繋がったダンナさんにこうなった経緯をずっと説明してて
『違いますよ。もう…』
バックミラーを覗くと
…姉貴の車を借りてきて正解だったな
璃子ちゃんの可愛いエンジェルたちは保育園で遊び疲れたのだろう チャイルドシートに身を預けて夢の中
『さっきも言いましたけど二泊三日で 部屋は私と子供たちだけです。…当たり前じゃないですか。』
…相変わらずなのは京介さんもか
『もう…』
さっきから何回も同じ台詞を言い回し さすがの璃子ちゃんも大きな溜め息をつく
…愛されてんだな
まだキミへの気持ちを完全には断ち切れていないボクには少々苦しいけど
『酷い…そんな言い方しなくたって…』
…どうした?
さっきまで頬を膨らませ唇を尖らせていたのに
『もういいです…じゃ。』
苦しそうな溜め息を一つ吐くとキミはスマホを膝の上に伏せ 真っ暗な闇に顔を向けた。
*
いつもそう…
『璃子ちゃん…』
私はどれだけ信用がないんだろう…
『ごめんね。埒があかないから切っちゃった。』
それは きっと私が一度京介さんの手を自らの意思で離したからだと思う。
『ゴメンね。やっぱり強引すぎたよね。』
『そんなことないよ。仕事だもん。蔵の嫁としてこのくらいは頑張らないと。』
あの時 病気とはいえあなたの頭の中から私の存在がすべて消えていたとしても
『…仕方ないよ。』
他の女性と結婚すると言ったあなたを信じ抜くことができなくて
『最終日には少しでも早く送るからさ。』
他の誰かに身を委ねたのは間違いなく私だったから。
『ありがとう。でもお仕事だから気にしないで。』
あれからもう10年…
紆余曲折あったけど私はあの時の苦しみや哀しみを笑顔に変えてあなたの胸に寄り添ってきた。
『相変わらず愛されてるんだね。』
けれど重ねた時間のせいなのか当たり前だけど
二人の時間は段々と減り 私ばかりがあなたのぬくもりを追い求めてて
『そんなことないわよ。』
…信用されてないだけ
あの日誓った薬指の永遠をクルクルと廻していた。