続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『おいおい…どんだけ惚れてんだよ。』
吉野が照れながらも彼女のことを話してくれたから 俺も酒の力を借りて璃子の話をした。
『笑いすぎだよ。』
『いやいや、だっておまえの話聞いてると 奥さんに構ってもらえないって不貞腐れてるガキみてぇで。』
他人から見たらそういうことなのだろうけど おまえが思ってるより事態は深刻なわけで
『子供ができるとダンナなんか二の次になるんだよ。』
不貞腐れて酒をあおる俺は吉野相手に何故だか心を開いてしまっていた。
『実はオレ…結婚する前に事故で記憶喪失になってカミサンのこと手放したことあって…』
『…記憶喪失?』
余計なことまで話始めてしまった。
『慕ってる先輩の息子さんを庇って頭打って…璃子のことだけ忘れたんだよ。』
『…マジ?』
『そう。その時、心に変な穴が開いてんのはわかるんだ。何かが足りなくてビュービュー風が吹き荒れてたから。でもそれが璃子なんだってわかるまでの間に俺は元カノと結婚しようとしちまった。』
『は?』
振り返れば振り返るほどバカみたいな話。
『バカだろ?』
…後悔しかない話
『キツいな。』
『あぁ…キツかった。』
それから 酒の肴になったのか俺はすべてを吉野に話した。
『写真ねぇの?』
『見てどうすんだよ。』
そんなこと言いながらもスマホに入ってる一番のお気に入りまで見せて
『なんか…ヒマワリみたいな人だな。』
去年の球納めのあの日に撮った子供たちとの3ショット。
『癒されるっていうか元気もらえるっていうか。』
『誉めすぎだろ。』
吉野の顔が緩むのを見て俺まで頬を緩めちゃって
『いや、何かわかるよ、切られても電話し続けちゃう気持ち。』
コイツは俺のスマホを勝手にスクロールして
『この笑顔が家で待ってくれてたら疲れも吹っ飛ぶな。』
『まぁな。』
なんて俺は得意気に熱燗をあおり一人で頬を緩めてた。
すると吉野はスマホを俺に差し出し
『さっきの話だけど。』
『ん?』
変に優しく微笑みながら
『奥さんのこともっと信用してあげれば?』
スマホを俺の目の前に置き
『長年連れ添ってるダンナにこんな笑顔を見せてくれるんだぜ。この人はおまえと一緒、ダンナのことしか見てねぇよ。』
吉野は長年俺の心に突っ掛かっていた何かを抜き去るべく語りかけてくれた。