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続・あなたの色に染められて

第14章 言葉 ~番外編~


「…もしもし。」

あんな切り方しちゃったから 電話に出てくれないと思ったのに

『ごめんなさい、寝てました?』

「ううん、今ホテルに戻ったとこ。」

スマホから聞こえるその声はとても優しかった。

『お帰りなさい。』

「ただいま。」

逢えないのにいつものように言葉を交わし

『…さっきはごめんなさい。』

いつものように私の方から謝る。

これからきっとお説教だ。

…何で俺に断りもなく出張行ってるんだって、他の男の車に乗ってんだって、勝手に電話を切るなって

「…。」

…だって私は信用がないから。

ベッドの端に座りすっかり夢の中の恵介と陽菜の額を撫でながら

叱ってもらえるうちが花だと自分に言い聞かせて彼の言葉を待つと

「いやその…謝るのは俺の方だ。」

いつもより小さな声でボソリと言った。

『…京介さん?』

コレは夢なんじゃないかって思うぐらい 今までの私たちのなかではあり得ない。

『どうしたんですか?』

素直に受け入れることもできず聞き返してしまう私に

「だからその…」

京介さんは聞き取るのもやっとなほど小さな声で

「…別に信用してない訳じゃないからな。」

言葉を紡いでくれた。

『どうしたんですか?急に。』

謝られることに慣れていない私はまだ素直に彼な言葉を受け入れることができない。

だっていつも男の人が絡むとギロリと睨んで頭ごなしにガツンと言われるのに

…もしかして呆れられちゃった?

スマホの向こうから彼の言葉が聞こえない。

『…コホコホッ。』

変な不安に襲われると薬を飲んで止まっていた咳もこんなときに限って復活する。

「具合…悪かったんだよな。」

『もうそんなに…コホコホッ。』

あぁもう!タイミング悪いって

「明日は忙しいんだろ?だったら早く寝ろ。じゃあな…おやすみ。」

『あっ…』

…プツッ

『待っ…』

…ツーツー

聞こえるのは私を遮断したとハッキリとわかる無機質な音

さっき私が京介さんに突きつけた音

『…これじゃ怒るよね。』

その音はとてつもなく胸をざわつかせ瞳を俯かせる。

『…京介。』

また怒らせちゃったな…

月明かりが差し込む窓辺に立ち、満点の星空を見上げる。

…いつからこんな風にになっちゃったんだろう

初めて京介さんからもらったハートのネックレスに手を添えた。

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