続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『デート?』
『そうデート。』
京介さんと二人でお出掛けしたのっていつだろう。
『う~ん…』
たまに営業先回りで二人きりなんて時はあったけど
『恵介が産まれてから一度もないかも…』
そう…親になったあの日から私たちはいつの間にか夫婦というよりも家族となっていた。
『一度も?』
『うん、たぶん。』
毎日子育てとお仕事に終われる日々で彼の胸で甘えられる余裕なんてハッキリ言って全然無くて
『うちの姉貴なんかしょっちゅうお袋に子供預けて二人で出歩いてるぜ?』
『そうなの?』
『よく姉貴が言ってるんだけど、奥さんとママと嫁さんやりながら働いて何足ものワラジ履いてんだろ?…って言うことは、璃子ちゃんも本来の姿が随分と奥底に眠ってるんじゃないの?』
『…。』
風間くんの言うとおり 私は日々の生活にどっぷりと浸かっている。
二人でお出掛けなんて夢のまた夢の生活
だけど、その生活に不満はない。
『でも、幸せよ。毎日お家のことと仕事で時間に追われてるけど、京介さんと子供たちの笑顔見れたらそれだけで充分。』
だって、これは私が望んだ生活だったんだもの
『なんか、璃子ちゃんらしいね。』
『そう?』
きっと私はいつのまにか欲張りになっていたんだ。
子供たちは大きな病気もせずに毎日元気な笑顔を私に向けてくれて
京介さんだって仕事仕事の忙しい日々のなかで私を気遣い子供たちの世話も率先してやってくれる。
私に構う時間なんてあるわけないか…
だから 今のままでいいんだ。
元気に走り回る子供たちを眺めながら私はコーヒーを飲み干した。
*
『いつもゴメンね。』
ほらね、キミはまたひとつワガママを胸にしまいこんだ。
コーヒーを飲み干すと自分の考えに蓋をするように目を閉じ一息ついてボクに頭を下げ
『よし!やりますか!』
気合いを入れて見せる。
『おっ璃子ちゃん、気合い入ってるねぇ。』
ボクはそんなキミの心の蓋を開けることはできないんだ。
『京介さんにいい報告が出るように頑張らなきゃ。』
その蓋を開けることができるのはボクじゃない。
キミが心底愛してるダンナさま
ボクに話してくれたことでキミが少しでも気が楽になればそれだけでいいんだ。
だって、キミの瞳は遠い空の向こうを見ている。
キミに嫉妬してるはずのダンナさまにね。