続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『はぁ?』
『はぃ?』
森田家一同が勢揃いしている社長室に京介さんと私だけが並んで立っていた。
『いいからいいから。』
『私たちに任せてよ。』
ソファーに座るみんなはニコニコしながら私たちにサプライズというか…辞令というか…
『無理ですよ。昨日も陽菜は夜泣きしましたし…』
『大丈夫よ、私たちもお義母さんが開催してくれるお泊まり会に参加するから。』
『でも…』
『うちのチビらが居れば恵介も陽菜も大丈夫だろ?』
『竜介さん…』
私は京介さんに助けを求めたけど
『うーん。』
二人揃って返事を濁してしまう。
『吉野さんのところとは付き合いも古い。今後のためもあるから二人揃って結婚式に参列してくれないか?』
社長であるお義父さんまで私たちを説得し始めた。
北陸の有名な酒蔵の次期社長となる息子さんの結婚式。
親交のある京介さんだけが列席する予定だったけど 今朝社長直々に二人揃って是非にとお誘いを受けたらしい。
『吉野のヤツ…』
『はぃ?』
『いや、何でもない。』
京介さんはクスリと微笑むと
『わかった。お袋と香織さんに甘えて二人で行ってくるよ。』
『え…ちょっと…』
…二人をおいてくの?
『璃子、吉野は特別だ。おまえも挨拶しておいて欲しい。』
もう…強引なんだから
『…わかりました。それではみなさんよろしくお願いします。』
こうして11月の終わりに私たちは北陸へと向かうことになった。
*
『失礼しました。』
社長室を出ると璃子は俺の袖をクイッと引っ張って
『何だよ。しょうがないだろ?』
唇を尖らせて睨み上げた。
『京介さんは恵介と陽菜おいていけるの?』
『そうじゃないだろ?』
璃子は今まで家族のことを第一に考えて仕事をしてきた。
だから 子供をおいてまで仕事なんて考えた事もないんだろうな。
『吉野は俺にとって、すげぇ大切なヤツなんだ。だから璃子の事をきちんと紹介しておきたい。』
それにこの間の今日だ。きっと吉野が気を利かせて璃子も招待してくれたんだと思う。
『…。』
璃子の頭にポンと手を置いて瞳を覗き込む。
『イヤ?』
『別にイヤとかそういうのじゃなくて…』
『じゃあ返事はなんだっけ?』
璃子は大きなため息を1つ吐くと納得しきれない顔をしたまま小さな声で
『…イエス。』
そう答えた。