続・あなたの色に染められて
第14章 言葉 ~番外編~
『そう…京介さんは全然なんです。』
湯に浸かっているせいなのか
『なんだよそれ、わかるように言えよ。』
今から紡ごうとしている言葉に恥じらいを持っているからなのか
『…早く。』
薄紅色をしたうなじを俺に向け
『あの…軽蔑しませんか?』
だなんて 馬鹿なことを聞く。
『するわけねぇだろ。』
この先の夜を考えて風呂では手を出すまいと自分に言い聞かせて入った。
だって 久しぶりにコイツを思う存分堪能できると思うと歯止めが利かなくなることぐらいわかっていたから。
それなのにコイツは
『恵介が産まれてからその…』
『うん。』
『淡白と言うか…』
『え…?』
『義務と言うか…』
『は…?』
『わかってます。恵介を産んで陽菜を産んで体重は戻ってもこの体ですから…』
『おぃ、ちょっと待て。』
原因はオレなのか?
『それはおまえが疲れてるから…我慢してたっていうか、自嘲してたっていうか…』
『…え。』
璃子は振り向くと潤ませていた瞳からポトリと涙を溢し
『ウソだよ…』
小さな声を紡いだ。
『あのなぁ、仕事も家事も子育ても完璧にこなしてくれるおまえに俺の欲だけぶつけちゃ不味いだろ?』
『…キャッ!ダメですそこは…』
『ダメじゃない。この体に触れたいって毎晩思いながらに1人で寝てる俺の身にもなれよ。』
*
京介さんのマメだらけな指先が腰からお腹へと移動する。
そこは一番触られて欲しくないところなのに
『もしだぞ?この腹がすげぇ出たとしても…』
『もう…ちょっと!』
京介さんは私の体をギュッと抱きしめて
『…それでもいいよ。璃子には変わらないから。』
耳元で囁いてくれた。
『俺たちって本当にバカだよな。』
抱きしめてくれていた手を私の小さな手が包み込む。
『ちゃんと言葉にすればいいのに いっつも自分で勝手に解決してな。』
『ダメですね。』
本当にそうだ。言葉にすれば済むことを…
でもそれは彼を愛しすぎているからなのかもしれない。
『あの…』
『何だ?』
今日ぐらいは素直になってみようかな…
『…いいですか?』
『何?…えっ…』
私は振り返りまだ熱を持っていない京介さん自身に手を添え
『ここに…座って?』
久しぶりの夜だから
『はっ?』
私もたくさん愛したい。
だから…私も愛してね?