続・あなたの色に染められて
第3章 知らない過去
璃子はシャツを捲り上げると俺の腹にキスを落とした。
ゆっくりと唇を押し付けて ゆっくりと離れていく。
それはまるで俺に向けて言葉を紡いでいるようだった。
顔を被う髪を梳くように掻き分け 頬を露にすると璃子は目を瞑っていて
俺はそのなんとも言えない表情を目にすると 肩を押して腹から引き離した。
『どした?』
璃子は俺の左手のに指を絡めるとリングをクルクルと回しながら
『私…ちゃんと京介さんのお嫁さん出来てるかな?』
『花丸あげたいぐらい上出来。』
『花丸…。』
切なそうに微笑むと璃子はまたシャツを捲り上げ俺の腹に唇を這わせた。
静かな部屋に響くのは 俺の肌に吸い付く璃子のリップ音
でも今度は少し違ったんだ。
指輪を弄っていた指は俺のスエットの上を撫で 一瞬俺を見上げると
『…京介。』
まだ熱も帯びていないそこに指を這わせ スエット越しに口づけた。
…やっぱり…。
コイツは心がパンクすると無理して俺を求める。
『…ったくおまえは…』
俺がそんなぎこちない誘いに乗ると思った?
『ヨイショ!っと。』
『…なんで?』
俺は璃子を一気に抱き上げ膝の上に乗せた。
『おまえはそんなことしなくたっていいの。』
『いいじゃない…私だって愛したいときぐらい…』
珍しく語尾を強めて俺に訴える。
『無理…ほら指が震えてる。』
掴んだ手にキスを落とすと璃子は華奢な肩を震わせ俯いた。
『明日 揃いの浴衣作るんだろ?んで 祭りの日にそれ着て俺の嫁さんだって挨拶してくれんだろ?』
正直 璃子の涙の理由はわからなかった。
ただひとつだけ言えるのは コイツが俺の体に唇を落とすとき
それは昔も今も変わらずSOSのサインだってこと
『俺…またおまえを困らせてるんだな。』
コイツの心理を探るように瞳を覗いても コイツは微笑んで首を振るだけ。
『教えて?その涙の理由。』
頬に流れる涙を拭うと璃子は俺の手を掴んで微笑んで
『…抱いて?』
握ったその手を胸元に押し付け
『ここを…京介さんでいっぱいにして?』
なぁ…おまえは覚えてる?
交際を申し込んだ帰り道 おまえは遠慮がちに俺に言ったよな?
「私…面倒くさいですよ?」って。
ホント おまえは面倒くせぇよ。