続・あなたの色に染められて
第3章 知らない過去
『抱けばすむわけ?』
京介さんはソファーの背にボスッと体を預けるとニヤリと微笑みながら
『おまえはマジで面倒くせぇ女だな。』
まるで誰かと比較しているような台詞
それは誰と比較してるの?
今まで付き合ってきた人?それとも体だけ重ねてきた人?
『なんなのおまえ…ウジウジして。』
そか…いつもハキハキしてる沙希さんか…
『ここんところずっとそうじゃん。仕事中も溜め息ばっかりで、話しかけたって上の空だし…』
髪を掻き上げながら首を傾ける仕草はまるで私を挑発しているよう。
『それに 俺が知らないとでも思った? 俺が接待の日 誰かさんとコソコソ事務所で会ってたみたいだし。マジなんなの?』
いつかの風間くんの話を京介さんは知っていたんだ。
『違う!コソコソなんて。』
『何が違うんだよ。』
『誤解よ。風間くんはそんな人じゃ…。』
『誤解…へぇ。じゃあ 何で隠してんの?』
いつものように唇を尖らせるわけでもなく 捲し立てるわけでもなく ただ淡々とすべてを見透かしたように私を攻めた。
それはいつもの私たちと真逆の光景だった。
誤解なんだって…信じてくれないの?って 必死に訴えてるのは私
『愛想のいい男がいいならそっちに行けよ。』
京介さんだってそうじゃない…幼馴染みだからって…
『じゃあ…。』
『じゃあ?』
京介さんさ勝ち誇ったようにクスリと笑って腕を組んで私の次の言葉を待つ。
私ってなんなんだろ…
誰かさんと違ってトロトロしてるから?なにも言えずウジウジしてるから?
面倒くさいだなんて…
だったら…だったら…
『京介さんだってそうじゃない!』
ずっと胸に秘めてたこと。きっと言ってはいけなかったこと。
でも 一度外れてしまったタガはもう戻すことができなくて
『京介さんこそ 沙希さんのところへ行けばいいじゃない!』
涙は止めどなく流れ 唇は震えて 睨み付けて 声を荒げて
でも何かがおかしかった。
だって京介さんは私とは対照的に優しく微笑んでいたから
『なるほどね…涙の理由は沙希か。』
…え…?
戸惑う私の腕を引き寄せて胸に抱き寄せられる。
『おまえはホントに面倒くせぇな。』
その言葉とは反対に私の髪を優しく撫でてクスクスと笑う。
私は何がなんだかわからないまま彼の胸に頬を埋めた。
『ホント 可愛いな。』